自治体間で受給情報が共有されておらず
二重、三重もの不正受給について、なぜ自治体は見抜くことができなかったのか。
川崎市の生活保護・自立支援室では、こう説明する。
「春日野被告は、生活保護の申請があったときは、市に住民登録をしていない状態でした。しかし、『麻生区の知人宅にいそうろうしていたが、出ることになり、住むところがない』と相談があったので、一時的に県立女性相談所に入ってもらいました。これで居住実態があることになりますので、保護費を支給しました」
春日野被告はその後、民間の女性保護施設に住んだり、知人宅に戻ったりした。知人宅にいたときは、本人に電話で住んでいるかを確認したという。しかし、多摩区のアパートに住みたいと申し出たものの、賃貸契約がされていないうえ、本人の行方が分からなくなったため、市が支給を打ち切った。
春日野被告は、どの自治体にも、この川崎市のケース同様、「住むところがない」と言って生活保護を申請していたようだ。
生活保護の受給状況については、自治体間で情報が共有されておらず、担当者は「生活歴を詳しく聞くなど把握に努めていますが、故意に隠されると調べるのは難しい」と漏らす。
川崎市での不正受給は、春日野被告が2014年6月に藤沢市への詐欺容疑で再逮捕されたときに、神奈川県からの情報提供をもとに調べて初めて分かったという。担当者は、「一自治体ではいかんともしがたく、自治体間の情報システムなどを国で検討してほしい」と話す。ただ、マイナンバー制度などの整備は、個人情報保護やコストの問題があり、国レベルでもなかなか進んでいない模様だ。