2009年に早稲田大学OBらでつくるサークルのメンバーが起こした株価操縦事件が「再来」しそうだ。NHKによると、このサークルの別のOBが不正に株価を釣り上げた疑いがあるとして捜査が進んでいるというのだ。
だが、NHKが使った「早稲田大学の投資サークル」という呼び名に当の早稲田大学が困惑しており、NHKに訂正を求めている。この「サークル」は早大側に全く届出をしておらず、大学としては実態を全く把握できないからだ。NHKの報道後、早大にはサークルの管理責任を問う声も寄せられたといい、「誤解のない表現になるように注意してほしい」と訴えている。
10年にもサークルの別メンバーが執行猶予付き有罪判決
早大が問題視しているのは、NHKが2014年8月26日早朝4時30分のニュースで「早大投資サークルOB 株取り引き 不正『3億円超利益』」というテロップとともに報じたニュースだ。
「早稲田大学の投資サークルに所属していたOB2人」が13年、株式のネット取引でウソの注文を大量に出す「見せ玉(ぎょく)」と呼ばれる手口で複数の会社の株価を不正に釣り上げたとして、金融証券取引法違反(相場操縦)の疑いが持たれているなどと報じた。送検取引等監視委員会が14年3月に関係先を強制捜査し、東京地検がOB2人に任意で事情を聴いているという。これだけではニュースで取り上げたのが早大のどのサークルかは分からないが、手がかりになるのがニュースの最後の
「この早稲田大学の投資サークルをめぐっては、4年前にも別のOBらが相場操縦の罪で有罪判決を受けています」
という部分だ。
過去も現在も「マネーゲーム愛好会」からの届け出はない
09年から10年の各紙報道を総合すると、「マネーゲーム愛好会」と呼ばれるサークルの早大OBら3人が証券取引法(現・金融商品取引法)違反容疑で逮捕され、10年4月には東京地裁で3人とも執行猶予つきの有罪判決を受けている。このことから、「この早稲田大学の投資サークル」は「マネーゲーム愛好会」のことを指すとみられる。
このNHKのニュース原稿はウェブサイトにも掲載されて広く知られるところになり、大学側にサークルの管理責任を問う声が寄せられたという。
早大では、サークルが早大の名前を使って課外活動をする際には大学に届け出が必要だ。だが、早大広報室によると、過去も現在も「マネーゲーム愛好会」からの届け出はないという。つまり、早大からすれば「マネーゲーム愛好会」は管理責任が及ぶ範囲から外れており関知しない以上、「早大のサークル」という呼び名は不適切だというわけだ。早大は8月26日中に抗議や訂正の申し入れをしたが、NHK報道の影響が広がったため抗議の内容を8月28日に大学のウェブサイトに掲載した。
実は、09~10年時点でも「マネーゲーム愛好会」は「早大投資サークル」と報じられていた。だが、今回のニュースで当時の不適切な呼び方が「蒸し返される」可能性が出てきたことから抗議に踏み切ったようだ。
9月1日には誤報を指摘するサイト「Gohoo」が、誤報の疑いがある「注意報」として早大のサイトの内容を紹介した。
早大広報室によると9月2日午後時点でNHKからは特段の回答はないといい、
「訂正されないままだと影響が広がるので、ウェブサイトで告知させていただきました。この『投資サークル』をめぐる続報が出る際も、各社には誤解のない表現になるように注意していただきたいです」
と話している。