地方都市の百貨店が続々と閉店している。
百貨店業界は2013年、円安・株高のアベノミクスの恩恵もあって2年連続で売上高が前年比プラスになった。ところが、14年4月の消費増税を伴う駆け込み需要の反動減で7月まで4か月連続で前年実績を下回っている。少子高齢化の急速な進展も暗い影を落としている。
高島屋和歌山店8月31日で営業終了
高島屋和歌山店(和歌山タカシマヤ)が2014年8月31日、営業を終えた。和歌山店は1973年5月、南海電鉄の和歌山市駅ビルにオープン。売上高はピークの1991年度には65億円だったが、2013年度は22億円に落ち込んでいた。
周辺の人口減に加えて、消費増税やイオンモール和歌山などのオープンで競争が激化。赤字経営は10年に及んだ。約90人の従業員は大阪店などに転勤するという。
和歌山市内にはかつて4つの百貨店があったが、98年に大丸百貨店が撤退。2001年には丸正百貨店が倒産。高島屋の閉店で、百貨店は近鉄百貨店和歌山店だけになる。
その近鉄百貨店も、京都府伏見区の桃山店(愛称「MOMO」)の営業を9月末で終了する。1996年の開店以来、営業赤字が続いていた。2007年に閉店したJR京都駅前の京都店に続く撤退で、京都から「近鉄」の看板が消えることになる。
首都圏でも、神奈川県を地盤とする老舗の地方百貨店「さいか屋川崎店」が店舗の賃貸借契約期間が満了となることを理由に、2015年5月末に営業を終了する。四国では、高松天満屋(香川県)が3月末で閉店した。他の百貨店や大型ショッピングセンターとの競争が激化し、収益改善が困難と判断したという。
長崎市の百貨店「長崎玉屋」は2014年2月末に閉店。1969年に開業の老舗だが、2009年に売り場面積を約半分に縮小していた。施設の老朽化やビルの耐震性の問題から、閉店を決めた。
長崎市では大丸、玉屋、浜屋の3つの百貨店が競ってきたが、11年7月に大丸が撤退。玉屋の閉店で、長崎市で営業している百貨店は、浜屋だけになった。
しかし老舗浜屋も13年3月末に大村店(長崎県大村市)を閉店し、経営資源を長崎店に集中している。
2014年8月12日、熊本市ではその名も「県民百貨店」が15年2月28日に閉店すると発表した。中心市街地の再開発計画が持ちあがり移転を迫られたが、資金面などで用地が見つからず営業の継続を断念。廃業を選んだ。
同社は地元企業の出資で02年10月に設立。阪神百貨店(現阪急阪神百貨店)の支援で03年に「くまもと阪神」として開業し、11年に「県民百貨店」に店名を変えた。14年1月期の売上高は約118億円。撤退によって、熊本市内は老舗の鶴屋百貨店だけとなる
和歌山、長崎、熊本… 地方都市では、もう複数の百貨店がいらない状況になっているようだ。
少子高齢化に、消費増税の影響「読み違い」で売り上げ不振
近鉄百貨店は2014年2月、日本一高いビル「あべのハルカス」に入る、日本最大級の売り場面積を誇る本店をオープン。なかでも10代後半~20代後半の女性を対象に、カジュアルやOL層向けなど計105の服飾専門店をそろえた「solaha(ソラハ)」は行列ができるほどの、絶好のスタートを切った。
ところが、その「ソラハ」の不振が響き、本店の15年2月期の売上高の目標を下方修正する。開業から、わずか半年足らずでの軌道修正だが、前年度の923億円の1.5倍超という「強気」が裏目に出たともいわれる。
どうやら、「消費増税」の影響を読み違えたようだ。3月は開業して間もないことに加えて、消費税増税前の駆け込み需要もあり、あべのハルカス前の旧店舗に比べて売上高が倍増したが、4月からはその勢いが鈍っていた。
日本百貨店協会が2014年8月19日に発表した7月の全国百貨店売上高は、既存店ベースで前年同月比2.5%減となり、4月から4か月連続で前年実績を下回った。梅雨や台風などの天候不順の影響もあるが、消費増税に伴う駆け込み需要の反動が続いた。
帝国データバンクによると、7月の景気DIは46.9。ところが、小売業に限ると37.3と、大きなマイナスだった。「4月以降、とくに高額商品の売れ行きがよくありません。そのため、百貨店には厳しい状況が続いています」と話す。
さらに、「百貨店の共通の問題として、少子高齢化があります。人口の減少が最大の問題です」。たとえば、新たな買い手として期待される外国人旅行者も、地方の百貨店では思うよう取り込めないのが現実。「買い手不在」が地方の百貨店を閉店に追い込んでいる。