戻ってきた弁天さま【岩手・大槌町から】(60)

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修復された弁天さま=2014年8月31日、大槌町赤浜
修復された弁天さま=2014年8月31日、大槌町赤浜

   大槌町の蓬莱(ほうらい)島の神社に安置され、震災で被災した「弁天さま」が修復され、8月31日、町に戻ってきました。高貴な顔立ち、色鮮やかな衣服。震災前の華麗さを取り戻した弁天さまを迎え、地元では式典を開いて喜び合いました。


   弁天さまはNHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルとされる蓬莱島の弁天神社に、「海の守り神」として祀(まつ)られている弁財天です。高さ50センチで、8本の腕に矛(ほこ)や弓、刀などを持つ「8臂(はっぴ)像」。津波による流出を奇跡的に免れましたが、傷つき、神奈川県横須賀市の仏師のもとで修復されていました。 由緒は定かではなく、地元には、近くの浜に流れ着いたのを祀ったという言い伝えが残っています。震災前、漁師たちは漁に出るときに弁天神社にお参りし、弁天さまに豊漁と漁の安全を祈願していました。


被災し傷ついた弁天さま=2013年5月23日、蓬莱島の弁天神社
被災し傷ついた弁天さま=2013年5月23日、蓬莱島の弁天神社

   弁天さまの修復には全国からの寄付金が充てられ、完成まで、約8か月かかりました。修復を手掛けた仏師の梶谷叡正さん(64)は「修復にかかわることができてうれしい。像は複雑な構造になっていました。大正6年修復の記述がありました」と話しています。


   弁天さまは、蓬莱島を望む大槌町赤浜の岸壁で開かれた「お迎え式」に臨みました。「ひょうたん島復興プロジェクト」代表の岡本大作さん(65)は「全国からの支援で修復が可能になった。これから被災した弁天神社の社(やしろ)や鳥居を再建していきたい」とあいさつし、碇川豊町長は「弁天さまと親しまれてきた弁財天が戻ってきて感慨深い。蓬莱島は町のシンボル。観光のためにも社や鳥居の修復に努力したい」と祝辞を述べました。


「お迎え式」を祝って舞う虎舞=2014年8月31日、大槌町赤浜
「お迎え式」を祝って舞う虎舞=2014年8月31日、大槌町赤浜

   蓬莱島は大槌湾に浮かぶ周囲200メートルほどの小島です。面積は753平方メートル。中央がくびれ、ひょうたんのような形になっています。島は震災で大きなダメージを受けました。弁天さまのほか、灯台、社、鳥居、陸と島を結ぶ防潮堤が津波で破壊されました。灯台や防潮堤は再建され、社、鳥居は被災当時のままです。

   これから島全体の復興が本格化し、社が修復されるまでの間、弁天さまは近くの神社に安置されることになりました。

(大槌町総合政策課・但木汎)


「ひょっこりひょうたん島」のモデルとされる蓬莱島=2014年8月31日、大槌湾
「ひょっこりひょうたん島」のモデルとされる蓬莱島=2014年8月31日、大槌湾

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