米金融大手シティグループの日本法人シティバンク銀行が、個人向け銀行業務の売却を3メガバンクなどに打診した。富裕層中心の顧客基盤は魅力的だが、不採算事業とあって各行は買収に及び腰だ。
しかし、ライバルに持って行かれるのを黙って見ているわけにもいかず、それぞれの出方を注視しながら腹の探り合いが続いている。
お客には一定の資産を持ち、運用にも関心が高い人が多い
「日本からシティバンクがなくなるのは困るよ」。外資系企業の幹部は売却打診のニュースに嘆息した。
「海外に出張したら、シティのATM(現金自動受払機)で日本の口座にある預金をおろしている。あれほど便利なサービスはない」
シティの強みは世界160以上の国と地域に持つネットワーク。顧客には、日本と外国を行き来する企業幹部や海外旅行が好きな高齢者などが多く、「一定の資産を持ち、運用にも関心が高い人が多い」(アナリスト)とされる。富裕層をターゲットに資産運用や相続関連のサービスを提供し、手数料を稼ぎたいメガバンクや信託銀行にとって、垂涎の的といえそうだ。
だが、メガバンクなどの買収意欲は意外に低い。ある大手行の幹部は「シティバンクの顧客は、シティのブランドや海外でのサービスが好きな『シティファン』。ある意味、日本の銀行が嫌いだからシティバンクを選んでいる。うちの看板に変わったら、客も預金も逃げていくでしょう」と自嘲気味に語る。
邦銀の海外ネットワークはシティに遠く及ばない。買収後、海外ATMで預金を引き出せるサービスがなくなれば、顧客は離れてしまう。別の大手行の役員は「シティとの提携などによって買収後もサービスを継続する手段はあるが、その分、高く売りつけられたり、多額の手数料を取られたりするのではないか」と警戒する。