昨年、高視聴率を記録したドラマ「半沢直樹」では、バンカーの半沢と金融庁検査官の黒崎との駆け引きが見どころだった。最後に勝利したのは半沢だが、実は、交渉に強いのは黒崎のほうかもしれない――。
顔の幅が広い男性は交渉をより有利に進められる
7月に「The Leadership Quarterly」オンライン版に掲載された調査結果によると、顔の幅が広い(顔の長さに対する横幅の比率が大きい)男性のほうが、顔の幅が狭い男性より交渉を有利に進められる傾向があることが分かった。
調査はカリフォルニア大学リバーサイド校とロンドン・ビジネス・スクール、コロンビア大学の研究者らが実施。賞与額の交渉や不動産売買など、いくつかの模擬交渉を男性同士で行ったところ、顔の幅が広い男性は競争的な姿勢で交渉に臨む傾向が強いことが分かった。
60人の男子学生を対象に行ったボーナス金額を決める模擬交渉では、顔の幅が広い男性は、顔の幅が狭い男性よりも平均して2,200ドル多く獲得したという。また、MBA取得をめざす男子学生46人を対象にした不動産売買の模擬交渉では、顔の幅が広い男性が売り手役のときは不動産に高値が付き、買い手役のときは安値になった。
この結果から考察すると、面長の堺雅人さん演じる半沢より、どちらかといえば顔の幅が広い片岡愛之助さん演じる黒崎のほうが交渉には強そうだ。では、なぜ黒崎は負けたのか――?
交渉に勝つには「強さ」だけでなく「しなやかさ」も必要
「ドラマだから」という答えはさておき、この調査結果には続きがある。顔の幅が広い男性は、勝敗がはっきりと分かれるような交渉には強いが、妥協や建設的な解決策が要求される場面では、高いパフォーマンスを上げることができなかった。調査では男子学生2人がペアになり、それぞれガソリンスタンドのオーナーと石油会社の担当者に扮し、ガソリンスタンドの売買について価格交渉を行った。双方の譲歩価格に折り合いがつかない場合、顔の幅が広い男性は、情報共有や相手との溝を埋める方法を見つけようという協力姿勢に欠ける傾向があるという。
調査を行ったカリフォルニア大学リバーサイド校経営学部のマイケル・ヘイセルハン助教は「今回の研究は、顔の幅が広い男性にとって良い面と悪い面の両方がある。将来ビジネスで成功するためには、重要な要素となるかもしれない」と言う。
ヘイセルハン助教らは以前にも顔の幅と交渉力についての調査結果を発表している。前回の調査では、顔の幅が広い男性はテストステロン(男性ホルモン)が強いため、より攻撃的な性格であることが多く、自己中心的で利益を得るためには相手を欺く傾向があることがわかっている。
「半沢直樹」に登場する黒崎検査官は、まさにこの調査結果に当てはまる。押しが強く高圧的で、相手を打ち負かすことしか考えていない。対して半沢は調整能力に長け、同期の仲間や部下と協力して厳しい金融庁検査を乗り切った。交渉に勝つには「強さ」だけでなく「しなやかさ」も必要だということなのかもしれない。
2014年8月8日に米国のハフィントン・ポストが報じた記事によると、ヘイセルハン助教は、顔の幅を変えることは不可能だが、行動を変えることでビジネスを成功に導くことは可能だとしている。
「顔の幅が広い男性は相手から攻撃的な人物と見られることを自覚して、(良好な関係を築きたいと望むのなら)協力的な雰囲気を出すよう努力すればいい。逆に、顔の幅が狭い男性は相手から『いいなりになる人』という印象を持たれるかもしれないので、十分に警戒することです」
これからタフな交渉が予想されるときは、鏡で自分の顔をじっくり観察し、心の準備をしてから臨みたい。[アンチエイジング医師団 取材TEAM/監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長]
参考論文
Negotiating face-to-face: Men's facial structure predicts negotiation performance
DOI: 10.1016/j.leaqua.2013.12.003
UCR Today
http://ucrtoday.ucr.edu/23919アンチエイジング医師団
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