交渉に勝つには「強さ」だけでなく「しなやかさ」も必要
「ドラマだから」という答えはさておき、この調査結果には続きがある。顔の幅が広い男性は、勝敗がはっきりと分かれるような交渉には強いが、妥協や建設的な解決策が要求される場面では、高いパフォーマンスを上げることができなかった。調査では男子学生2人がペアになり、それぞれガソリンスタンドのオーナーと石油会社の担当者に扮し、ガソリンスタンドの売買について価格交渉を行った。双方の譲歩価格に折り合いがつかない場合、顔の幅が広い男性は、情報共有や相手との溝を埋める方法を見つけようという協力姿勢に欠ける傾向があるという。
調査を行ったカリフォルニア大学リバーサイド校経営学部のマイケル・ヘイセルハン助教は「今回の研究は、顔の幅が広い男性にとって良い面と悪い面の両方がある。将来ビジネスで成功するためには、重要な要素となるかもしれない」と言う。
ヘイセルハン助教らは以前にも顔の幅と交渉力についての調査結果を発表している。前回の調査では、顔の幅が広い男性はテストステロン(男性ホルモン)が強いため、より攻撃的な性格であることが多く、自己中心的で利益を得るためには相手を欺く傾向があることがわかっている。
「半沢直樹」に登場する黒崎検査官は、まさにこの調査結果に当てはまる。押しが強く高圧的で、相手を打ち負かすことしか考えていない。対して半沢は調整能力に長け、同期の仲間や部下と協力して厳しい金融庁検査を乗り切った。交渉に勝つには「強さ」だけでなく「しなやかさ」も必要だということなのかもしれない。
2014年8月8日に米国のハフィントン・ポストが報じた記事によると、ヘイセルハン助教は、顔の幅を変えることは不可能だが、行動を変えることでビジネスを成功に導くことは可能だとしている。
「顔の幅が広い男性は相手から攻撃的な人物と見られることを自覚して、(良好な関係を築きたいと望むのなら)協力的な雰囲気を出すよう努力すればいい。逆に、顔の幅が狭い男性は相手から『いいなりになる人』という印象を持たれるかもしれないので、十分に警戒することです」
これからタフな交渉が予想されるときは、鏡で自分の顔をじっくり観察し、心の準備をしてから臨みたい。[アンチエイジング医師団 取材TEAM/監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長]
参考論文
Negotiating face-to-face: Men's facial structure predicts negotiation performance
DOI: 10.1016/j.leaqua.2013.12.003
UCR Today
http://ucrtoday.ucr.edu/23919アンチエイジング医師団
「アンチエイジングに関する正確で、最新かつ有効な情報」を紹介・発信するためにアンチエイジング医学/医療の第一線に携わるドクターたちが結成。 放送・出版などの媒体や講演会・イベント等を通じて、世の中に安全で正しいアンチエイジング情報を伝え、真の健康長寿に向き合っていく。 HPはhttp://www.doctors-anti-ageing.com