金融庁は、韓国の銀行最大手、国民銀行の東京支店と大阪支店に新規の取引業務を禁じる業務停止命令を、2014年8月28日に出した。
処分の理由は、不正融資。金融庁は不正融資の規模については明かしていないが、韓国の地元紙などの報道では、4000億ウォン(約400億円)ともいわれている。
不正融資は4000億ウォン規模
金融庁によると、国民銀行東京支店で不正融資が発覚したのは2013年のこと。韓国の中央日報日本版は、東京支店長のポストを狙った人物が実績ほしさに不正を働いたと伝えており、ソウル中央地検が13年12月29日、返済能力の乏しい企業から金品を受け取り100回余りにわたり総額4000億ウォンを不正に融資した容疑(特別経済犯罪加重処罰法上の背任など)で、前国民銀行東京支店長と副支店長を起訴したと報じている。
金融監督院の調査で当初確認した不正融資は1800億ウォンとされ、その2倍を超える規模に膨らんでいた。
一方、韓国の検察当局は前支店長に不正融資の代価として9000万ウォンを渡した容疑で、企業の代表を不拘束起訴。同時に、代表の要請を受けて16億ウォン相当の円を韓国に持ち込もうとした容疑(外国為替取引法違反)で従業員も不拘束起訴されたが、この資金の一部が前支店長らに流れていたとされる。
また、日本ではほとんど報じられなかったが、韓国の検察当局が捜査を進めている最中に、国民銀行東京支店の融資担当の男性職員が自殺。この職員が不正融資に関わっているかどうかはわからずじまいだ。
こうしたなか、金融庁は2度にわたる立入検査(13年10月15日、14年4月25日通知)を実施。韓国の金融監督院の協力もあり、行政処分に踏み切った。
金融庁は処分の理由について、一部の歴代東京支店長や役職員が同一企業グループの複数の法人に分散した融資や、担保査定の根拠資料を偽造による「水増し融資」などの多数の不適切な融資を自ら実行していたことを挙げる。また、歴代東京支店長や役職員が、融資先やその代表者と疑われる先からリベートのおそれがある資金を受け取っていたこと――もあるという。
さらには、信用リスクの管理や法令順守体制などに不備があり、日本での営業を続けるには抜本的な見直しが必要だと判断した。
新規取引業務の禁止は、2014年9月4日から15年1月3日までの4か月間。金融庁は、「重い処分です」と話す。
韓国外換銀行で不正送金、中小企業銀行、ウリィ銀行でも不正融資か?
じつは、韓国の銀行が業務停止命令を受けたケースは今回が初めてではない。金融庁は2010年1月、韓国外換銀行に対して1月14日から3か月間、東京支店などで新規の顧客勧誘などを禁じる業務停止命令を発している。
不正利用されることを認識しながら、お客が暴力団関係者から一時的に借り入れた4億円の資金を預金口座に入金し、預金残高証明書を発行するなど複数の不正が発覚したほか、金融庁への報告も暴力団関係者が絡む取引だったことを隠ぺい。さらには関与していた元支店長らが繰り返し、支店経費を架空計上するよう職員に指示し、私的流用していたという。
同行にとって、この処分は2度目。1回目は2006年3月に、外国為替送金をともなう法人客との新規取引業務(既存法人客との取引を除く業務)などの3か月間の停止が命ぜられている。金融庁は、いわゆる地下銀行との取引を排除すること、不正送金の防止態勢を構築すること、法令等遵守にかかる内部管理態勢を構築すること――を求めた。
さらには、国民銀行以外の銀行でも不正融資による行政処分が行われる可能性がある。2014年8月29日付の日本経済新聞は、金融庁が韓国の中小企業銀行とウリィ銀行の在日支店で、不正融資があったことを立ち入り検査で把握している、と報じた。
立ち入り検査の状況などは「お話しできない」(金融庁)というが、すでに韓国の金融監督院が中小企業銀行とウリィ銀行の東京支店で不正融資が行われていることを把握。特別検査に入っていた。そういった情報をもとに、金融庁も事態を把握したとみられる。
いずれにしても、在日支店を舞台にした不正融資は、韓国の銀行全体に広がっているようだ。