消費税再増税「党内でじっくり議論してもらうのもいい」
これで思い出されるのは、7年前に石破氏が公言した、当時の安倍首相退陣論だ。2007年7月の参院選で自民党は惨敗した。そのときの石破氏のものいいは、「総理は選挙の苦労もしていない。総理が退陣しなければ自民党が終わってしまう」と、安倍首相への個人攻撃も含めて辛辣なものだったことを記憶している。おそらく安倍首相は決して忘れていないだろう。石破氏は、麻生政権の時にも、麻生下ろしに加担したことがある。
こうした状況から見れば、今後は「安倍首相対石破氏」という対立構図になる公算が高い。もちろん老獪な安倍首相であるので、閣内の他ポストを提示して、閣内「座敷牢」にする可能性もまだある。「石破氏 地方創生相の方向」(産経新聞8月28日付朝刊)といった報道もでている。
ただし、石破氏が安倍内閣の外で対抗勢力になっても、今の自民党内の抗争であって、日本にとって悪いことでもない。というのは、政治抗争は、しばしば政策論争を伴うからだ。
安倍首相と石破氏の政策観の違いは、安全保障より経済政策のほうがより大きい。4月からの消費税増税で景気の先行きが危ういが、この際、10%への消費税再増税を強行するかどうか、増税勢力はそれだけは避けてもらいたいだろうが、党内でじっくり議論してもらうのもいい。10%への再増税は政治的に大勢としては決着済みであるが、政局になると何が起こるかわからない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。