今夏の高校野球、甲子園大会は大阪桐蔭が4度目の優勝を飾った。2014年8月25日の決勝で三重に4-3の逆転勝ち。
今回際だったのは東北、北信越の代表校の頑張りだ。ところが、選手を見ると意外な事実が…。
これまで強豪校の少なかった東北、北信越勢
ベスト16に進出した半分が東北と北信越の代表だった。八戸学院光星(青森)盛岡大付(岩手)山形中央(山形)聖光学院(福島)の東北勢。敦賀気比(福井)星稜(石川)富山商(富山)日本文理(新潟)の北信越勢だ。
さらにベスト8には敦賀気比、八戸学院光星、聖光学院、日本文理の4校が入った。ベスト4に2校が進んだ。この準決勝で敦賀気比と日本文理が敗れ、深紅の大優勝旗には手が届かなかった。
この躍進は注目に値する。これまで東北、北信越は北海道や山陰などとともに一部を除いて、あまり強豪校は出なかった。
東北地方が最も話題になったのは1969年の青森・三沢。白地にグリーンの文字が書かれた素朴なユニホームを着たエース大田幸司がマウンドを死守。決勝で古豪の松山商と対戦し、延長18回引き分けの後、再試合で敗れた激闘は、高校野球史上に残る名勝負となっている。
この両校の対決は全国のファンがテレビに釘付けとなり、「街から人が消えた」といわれたほどだった。敗れた大田が投手マウンドに行って土をポケットに入れたシーンはまるで映画のラストシーンを見るようだった。高校野球のアイドルブームはこの大田によって火がついたのである。
三重はほとんどが地元出身だった
今回の東北、北信越勢の代表校は、公立が富山商と山形中央。あとの6校は私立。選手の出身地をみると、公立校は地元出身者ばかり。私立では星稜がすべて地元出身者となっている。
残る5校は、いわば「多国籍軍」の様相である。野球どころの大阪、兵庫などの近畿、さらに神奈川、東京などの関東の各地から選手が集まっている。レギュラーの大半が県外出身者という高校もあった。いかに甲子園出場を目指す選手が多いかという証明だ。
その実態から思うに、やはり野球のレベルの高い地域から選手を集めることによって、甲子園の道が開けることが分かる。近畿や関東は中学生も多く、学校だけでなくクラブチームも多い。硬式球のチームも随分とある。優れた指導者からのコーチを受けやすい。
とりわけプロ野球経験者が関東以西に多く住んでいるから影響もある。またプロ野球の球団が小学生からの指導をアカデミーとして指導しているし、大会も開催している。このように小学生時代から本格指導の環境にいるのといないのでは、およそ2年半の短い高校野球では差が出る。
東北、北信越の健闘の裏側にはそのような実態があったことを確認しておきたい。ちなみに決勝で対戦した大阪桐蔭は福岡、広島などの出身者がいた。三重は同じ私立でありながらほとんど地元出身の選手だった。
(スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)