大人気のVOCALOID、「初音ミク」はもはや時代遅れの飽きられたコンテンツ、「オワコン」なのか――。インターネットで、そんな声がささやかれている。
そう言えば、最近あまり耳にしなくなった初音ミクの歌声。あまり話題にものぼらなくなってきたような気がする。
「作り手が『そろそろ終わらせたい』という感じなのかな」
人の音声とコンピューターの歌声を合成するVOCALOID。その「申し子」とされる「初音ミク」の「オワコン」説は、じつは生みの親であるクリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之社長が「発信源」になっているといえなくもない。
2014年8月23日に開かれた「OngaCRESTシンポジウム2014 音楽情報処理研究が切り拓く未来を探る」で、伊藤社長が「初音ミクが切り拓いてきた世界、切り拓く未来」と題して、技術が生み出すコンテンツ文化の発展について講演した。
その際に、伊藤社長はニコニコ動画でのVOCALOIDの50万回以上の再生数の推移を、グラフを用いて説明。
2011年 68曲
2012年 77曲
2013年 39曲
2014年 7曲(8月21日時点)
と、激減していることを明らかにした。
このまま推移すれば、2014年末は単純計算で12曲前後になってしまう。ピークだった2012年の77曲の、じつに6分の1にまで落ち込むことになる。
このグラフが、講演を聞いていた人のツイッターを介してインターネットで拡散。ネットには、
「なんか曲調が過激になって一気に飽きがきた感じ。最近は一般ウケとかけ離れた曲ばっかり」
「まぁ、ブームだったんだよ」
「作り手が『ボカロが以前ほどカネにならなくなったからそろそろ終わらせたい』という感じなのかな。だとしたら、もう救えないな」
「こういうコンテンツは終わったといわれてからが本番だよ。エヴァやたまごっちも終わったといわれながら、細々と続けていた時期があったわけで、新たなテコ入れで還り咲くならそれもよしだろ」
といったカキコミやつぶやきであふれている。
初音ミクが登場したのが2007年8月のことだから、
「むしろ持ったほうだろ。何年経ってんだと思ってるんだ」
といった声もある。
ブームなんだから、「終わり」がくるのは当然というわけだ。
「もうちょっとミクが人間に近い曲にならないと」
「初音ミク」は歌声合成技術であるVOCALOIDの「火付け役」であり、いわば「代名詞」。2007年8月31日にリリースされると、初音ミクを用いた動画が動画投稿サイト「ニコニコ動画」に次々と公開された。当初は初音ミクにカバー曲を歌わせる動画が多かったが、しだいにユーザーが作詞・作曲したオリジナル曲が増え、さらには他のVOCALOIDキャラクターへと広がっていった。
VOCALOID作品の発表の場となったニコニコ動画にとっても、初音ミクは成長の原動力の一つだったといえ、インターネットには、
「ニコ動が落ち目なのが大きいな」
「PC離れで、ニコ動もあんまり見なくなったなあ」
といった声もある。
ただ、VOCALOIDが身近になったことから投稿数が増え、曲が分散し再生回数が伸びないといった指摘もある。VOCALOIDは「オワコン」とのつぶやきもあるが、ブームが峠を越えて人気が落ち着いてきたことで、突出した楽曲が出にくくなったのかもしれない。
一方、「OngaCRESTシンポジウム2014」を主催した「OngaCRESTプロジェクト」は、音楽の聴き方や創り方の未来を切り拓く技術・研究開発を行い、音楽の楽しみ方をより能動的で豊かにするのが目的。そのため、
「もうちょっとミクが人間に近い曲にならないと。いくらコンビニで流れても、電子音で気持ち悪いってなるわな」
「何年もミクやらせるのもいいけど、少しくらい違和感を消す努力もしろや」
と、技術の向上を促す、厳しいコメントもみられる。
(追記)J-CASTニュース編集部はクリプトン・フューチャー・メディアに取材を申し入れていたが、8月27日午後になって、「初音ミクを『終わったコンテンツ』とは認識しておりません」との回答があった。