宮崎市のリゾート施設「シーガイア」を運営するフェニックスリゾート(松永裕文社長)が、2007年から閉鎖中の大型屋内プール「オーシャンドーム」(約8万4600平方メートル)の再活用を断念し、解体することを決めた。
フェニックス社が2014年8月1日に発表した。
事業の「選択と集中」進める
記者会見した松永社長は取り壊しについて、「苦渋の決断」と語った。開閉式屋根の一部が腐食するなど老朽化が進み、再オープンには莫大な改装費用が必要となるが、「期待される売り上げより改装費用が大きく上回る」(松永社長)として、解体を決めたという。ただ、具体的な解体時期や跡地の利用計画は決まっていない。
オーシャンドームの解体に加え、隣接する高層ホテルやコンベンションセンターを来年春から2年がかりで、総額100億円を投じて大規模改装し、シーガイアの近くにある別のホテルは来年6月に閉鎖することも発表した。事業の「選択と集中」を進めて厳しい経営環境を乗り越える考えだ。
「観光宮崎」の復権のために計画されたシーガイアは1993年に宮崎県と宮崎市が25%ずつ、残りの50%を民間企業11社が出資する第三セクターとして開業した。国内有数の景観を誇る一ツ葉海岸沿いにある高層ホテルやコンベンションセンター、ゴルフ場、レストランなどを備えたリゾート施設で、その中核施設として約420億円を投じて建設されたのがオーシャンドームだ。
長さ300メートル、幅100メートル、高さ38メートルという「世界最大級の屋内プール」には開閉式の屋根や造波プール、人工ビーチが整備されていた。
しかし、交通インフラが脆弱なために「陸の孤島」と呼ばれている宮崎で、しかもバブル崩壊後のオープン。また、自然の海が近くにあるという立地もあって、当初からオーシャンドームの集客力は疑問視されていた。
建設前から疑問の声が出ていた
案の定、入場者は1995年度の125万人をピークに減少していった。フェニックス社の経営も軌道に乗ることなく、2001年には3261億円の負債を抱えて会社更生法の適用を申請。米投資会社が経営を引き継いだが再建は進まず、今はセガサミーホールディングスの子会社になって、2007年に閉鎖したオーシャンドームの再活用を検討していた。
ネット上では、解体について「なんだか寂しい」「もう一度行きたかった」などと惜しむ声もあるが、「予想通り」「まあ仕方ない」「海で十分」などの意見の方が目立つ。しかし、圧倒的に多いのは閉鎖の是非よりも、そもそも宮崎にこれほど「バブリー」なリゾート施設を建設したことを疑問視する声だ。
地元でもシーガイア開業前、防風林の松を大量に伐採しての施設建設に反対運動が盛り上がった。当時、「美しい海のそばにプールを作っても成功しない」「バブルが弾けて観光客には見向きもされない」「失敗して県民負担が増えるだけ」など、今を見越したかのような主張が掲げられていた。それでも、バブル崩壊でほかのリゾート構想が頓挫していくなか、シーガイアは第三セクターが運営し、国のリゾート法の第1号指定を受けるなどしたため計画が続行された経緯がある。