エアコンの効いた部屋で暮らしたことがなかった
初公判を傍聴したジャーナリストの江川紹子さんは3月13日、ツイッターで「強烈な『負け組』意識に圧倒された」「言いたいことはよく伝わってきて、頭は良さそう。けど、人生投げやり感は半端ない。なのに、ネットやマスコミの評価を気にする。すごくねじれた感じ」と感想をつづった。お笑い芸人で「裁判ウォッチャー」として知られる阿曽山大噴火さんは、日刊スポーツ電子版への寄稿で「意見陳述の中身は本心なんだろうけど、どうも偽悪者を演じているようにも思えるんだよなぁ」と印象を書いていた。
7月18日の最終意見陳述では、篠田編集長によると「A4のレポート用紙44枚」を用意。法廷では一部の読み上げにとどまったが、ブログには全文が掲載された。冒頭陳述が誤った認識に基づいて書かれたとして「撤回したい」と言い出し、「被虐うつ」を描いた1冊の本が差し入れられたのがきっかけで、自分がどんな人生を歩んできたかが分かったと説明している。「自分は夢なんか持っていない!まともに夢すら持てなかったんだ!」「生ける屍」「浮遊霊だった自分が生霊と化した」などと自己分析。また「撤回したい」と言っていた冒頭陳述でも語っていた子ども時代のいじめについて、改めて「小学校時代の6年間は地獄でした」と振り返っている。夢など持ちようのない人生を歩んできた末に、「結果として自分は負け組と呼ばれる社会的地位になりました。それは戦って負けたのではなく、また自ら怠惰を選んで負けたのではなく、不戦敗に近い負け方でした」と結論づけた。
そして8月21日の判決後、声明で実刑を「喜んだ」被告。最初から「控訴しない」と明言しており、これで刑が確定する可能性は高い。篠田編集長はブログで、被告の幼少期のいじめや虐待と合わせて成長してからの生活苦について言及した。「聞いてみると彼はこれまでエアコンの効いた部屋で暮らしたことがなかったという。年収200万を超えたことがないという、ワーキングプアともいえる生活を長いこと送ってきた彼にとっては冗談でなく本当に拘置所は快適らしい」というのだ。そのうえで、苦しい生活が犯罪に結びついたと考えないわけにはいかないとしている。
初公判で「とっとと死なせろ!」と叫んだ被告。「出所したら自殺するという意志は今も変わっていないと思う」と篠田編集長は指摘する。意見陳述で自ら延々と絶望を語り、あえて世間の反発を買うような憎まれ口をたたいてきたが、4年6か月の刑期のなかで考えが変わることはあるだろうか。