真夏の暑さを吹き飛ばすようなフレッシュな話題。西武のルーキー森友哉が2014年8月16日、新人として46年ぶりとなる3試合連続ホームランを放ち、おとなしいプロ野球にカツを入れた。
大阪桐蔭時代に阪神・藤浪とバッテリー
「西武の森です」
初めてお立ち台に立った森は、人なつこい丸い顔に笑みを浮かべながら第一声を発した。新人らしい姿勢にスタンドから好感の拍手が起こった。
15日の日本ハム戦。この日は指名打者として先発出場した。打撃の良さを買われての出番だ。左打席に立ち、2回一死からメンドーサの高め、145キロの速球を捕らえ、西武ドームの右中間へたたき込んだ。
前夜に続く連続ホームランである。高卒ルーキーの2打席連続アーチは、あのゴジラ松井が巨人時代に記録して以来だった。
「まぐれですよ。でも唯一の取り柄は打つことです」
実は、この一発で多くのファンは、「ああ、あの森か」と思い出した。
2年前の12年、大阪桐蔭の2年生捕手としてエース藤浪晋太郎(阪神)とバッテリーを組み、甲子園大会で春夏連覇を達成。打っても1番打者として強烈な先制パンチを浴びせた。
昨年は主将としてチームを引っ張った。春の選抜大会で「春夏春」の3季連続優勝、夏の選手権での2年連続優勝は成らなかったが、ドラフト1位で西武に入団した。その森である。
14日にはプロ8打席目で初本塁打を放ったが、さほど騒がれなかった。
小柄な体で三方に打ち分ける
ただ者ではないことは16日の同じ日本ハム戦で見せつけた。1点を追う延長10回一死に代打で打席に。日本ハムのクローザー増井の2球目を、なんとバックスクリーンへ運んだ。同点としてチームの敗戦を救い、引き分けに持ち込んだ。
「(増井は)球の速い投手と聞いていたので、ストレートに合わせ、思い切り振った」
これで3試合連続本塁打である。高卒新人の3試合連続は1953年の西鉄豊田、68年の中日江島以来で、46年ぶりの快挙だった。
新記録に期待がかかった。17日は四球。連続試合記録はルールで継続となった。18日は三振して途絶えたが、甲子園のヒーローが甲子園の季節に突如として現れ、久しぶりの新鮮な話題に球界は盛り上がった。
森の3本のホームランを振り返ってみると、その非凡さが分かる。
▽ 1号=左翼スタンド
▽ 2号=右中間スタンド
▽ 3号=中堅スタンド
見事に打ち分けている。ホームラン打者でもこのように3本を三方へは打てない。170センチの小柄な体を考えると、そのパンチ力のすさまじさに驚く。スイングの鋭さがその秘密である。
「打てる捕手として頑張りたい」
森の明るさはチームに影響を与え、これといった話題のないプロ野球にカツを入れたといっていい。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)