高橋選手がキスに「真摯に同意」していたのかが重要
文春の報道について、橋本聖子事務所は「キスを強制した事実はありません」とのコメントを報道各社に送付した。行為については認める形となるが、
「何か特別な関係があるわけではありません。また、ほかの選手、コーチ、スタッフなどにも敬意と感謝を込めてハグしていました」
「選手団の選手や役員は、外国の選手などと交流が多く打ち上げなどでは、ごく自然にハグやキスをすることがあります」
というスケート界の「常識」を解説した。その上で、
「ただし、一般の方の誤解を招くようなことがあったとすれば、気を付けなければならないと反省しています」
と述べた。
実際に「ごく自然」にハグやキスが行われているのかは分からないが、「強制性はない」としていても、橋本氏は日本スケート連盟の会長でありJOC(日本オリンピック委員会)常務理事という立場だ。一般的に考えてこの状況でキスを執拗に求められたのだとすれば、断るのは容易ではないだろう。
アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士は、
「職場において労働者の意に反する不快な性的言動があればセクハラ、権力を不当に利用した嫌がらせがあればパワハラにあたります。二つの境界線は曖昧ですが、今回のケースでは、キスが強制であったのであればセクハラ・パワハラにあたる可能性があります」
と指摘する。
高橋選手のマネジメント会社は日刊スポーツの取材に対し、「セクハラでも何でもなく、スケート界では健闘をたたえて、ハグやキスをすることはよくあることです」とコメントしている。とはいえ高橋選手の本音は分からない。岩沙弁護士は
「仮に高橋選手がキスに真摯に同意していたのであれば、高橋選手に対するセクハラにはなりません。高橋選手側がセクハラではないと主張しているのであれば、今後、慰謝料請求を含めて橋本会長を追及しない意向であるととらえることができます」
と言う。
その一方で
「周囲の人たちが行為を見て不快に思った場合は、本人のみならず周囲の人たちに対するセクハラも成立する可能性があります。今回の場合もキスが組織の他のメンバーの前で行われているため、他のメンバーに対するセクハラとなる可能性があります」
とした。