市場が注目する株価の新指数「JPX日経インデックス400」の銘柄が、2014年8月29日に初めて入れ替わる。8月7日の銘柄入れ替えの発表では、業績低迷に苦しむソニーが外される一方、ライバルのパナソニックが新たに採用されるなど、明暗がくっきり分かれた。
収益性の高さや企業統治(コーポレート・ガバナンス)が選定基準となり、ランキングまで発表されるとあって、その選定は企業行動にも影響を及ぼしている。
ソニー、スカイマークやワタミ、ゼンショーが除外
東京証券取引所を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)と日本経済新聞社が発表した銘柄入れ替えによると、新たに採用されるのはパナソニックのほか、カシオ計算機やマツダ、大和証券グループ本社、大塚ホールディングスなど。これに対し、ソニーのほかスカイマークやワタミ、ゼンショーホールディングスなどが除外となった。
JPX日経400は東証が企業の持続的な成長性とガバナンスを重視し、14年1月から導入した株価の新指標。銘柄の選定にあたっては、上場3年以上であることや時価総額などを基準にまず1000社に絞り込む。そのうえで、企業が株主から集めた資金をどれだけ効率よく使い利益を上げているかを示す指標「ROE」や、営業利益などを用いて各社のスコアを算出。独立性の高い社外取締役を複数置いているか、国際会計基準を採用しているかなど、経営の透明性にかかわる定性的な要素も加味したうえで400社を選び、ランク付けする。
ソニーの株価は、銘柄除外を嫌気されて伸び悩み
銘柄は6月最終営業日のデータをもとに毎年見直され、8月最終営業日に入れ替えが行われる。初めての入れ替えの内容は「ほぼ市場の事前予想通りだった」(アナリスト)が、好調な2014年4~6月期決算を受けて上昇していたソニーの株価は、銘柄除外を嫌気されて伸び悩んだ。一方、新採用された大塚ホールディングスなどの株価が上昇するなど、銘柄選定がさっそく投資家心理を動かした。
JPX日経400の銘柄に選ばれるかどうかが株価に影響するのは、ROEを重視する海外投資家の注目が高いうえ、日本最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が資産運用のベンチマークとして同指数を採用したためだ。東証は11月に同指数の先物取引を導入する予定で、今後、同指数に関連する投資信託やETF(上場投資信託)も増える見通し。市場では「選定された銘柄は将来的に需要が高まるとの期待が強い」(国内証券)という。
アマダは利益の50%を配当、残り50%を自社株買い
企業側も、銘柄選定に照準を合わせて動き始めている。金属加工機械製造のアマダは、利益の50%を配当、残り50%を自社株買いに充てる方針を打ち出し、市場を驚かせた。ROEの向上や株価上昇が狙いだ。JPX日経400の銘柄入れ替えが近づくにつれ、証券会社には上場企業から「うちは入るのか」「何位くらいになりそうか」といった問い合わせが増えたという。東証は、同指数について「日本企業に資本効率を意識させるきっかけになった。銘柄に入ることを経営目標にする会社が出るなど、企業の行動に影響を与えている」と話す。
ただ、市場では、パナソニックが3年平均のROEがマイナスにもかかわらず選定されたことに「直近決算のROEがプラスだったため選ばれたのだろうが、指数の意義が問われる」といった声も出ている。同指数の存在感の高まりは、内部留保をため込みがちだった日本企業の行動を大きく変える可能性が指摘されるが、選定をめぐって企業の一喜一憂も続きそうだ。