2014年8月15日から17日まで行われた、同人誌などの展示即売会「コミックマーケット(コミケ)86」に、何と演歌歌手・小林幸子さん(60)が「売り子」として参加した。
演歌界の大御所と「オタクの祭典」、一見相容れなさそうな2つだが、ふたを開けてみれば小林さんのブースは大盛況。購入できなかった人とも握手して回るなど、オタクのハートをガッチリつかんで帰ったようだ。
購入できなかった客にもあいさつ、握手して回る
小林さんは「コミケ」最終日の8月17日、「5884組(コバヤシグミ)」というサークルで、VOCALOIDの人気曲「千本桜」を「歌ってみた」曲など5曲入りのCD「さちさちにしてあげる♪」を1000円で販売。本人もブースに立つと告知していた。
参加者のツイッターによると、当日は小林さんのCDを求める人が始発で会場に駆けつけ、10時の開場を待たずして9時半過ぎから行列が作られた。
小林さんは紺の浴衣姿、頭には黄色いバンダナを巻いた出で立ちで本当に売り子として登場し、写真撮影や握手に快く応じながら12時40分頃には約1500枚のCDを完売させた。
完売後、購入できなかった客がまだ列をなしていたが、小林さんは彼らのもとに向かい「完売しちゃってごめんなさい」「ありがとうございました」と声をかけながら1人1人と握手を交わしたという。
ツイッターでは、会場で小林さんと握手した人たちが「幸子さんが列に向かって『お待たせ~!』みたいな感じで両手上げて手振ってくれた!握手もしてきた!いい人過ぎる」「小林幸子さんから握手求めてくれたし、いつも紅白見てます!って言ったらありがとーって返してくれた」「小林幸子さんに握手していただいた手がまだ温かい。エネルギーを感じる」など、小林さんの「神対応」を口々に絶賛した。
「ラスボスって呼んで!」ノリの良さがウケた?
小林さんがオタクに大人気というのを意外に思う人もいるかもしれないが、ネット上、特にニコニコ動画では小林さんがNHK紅白歌合戦で、美川憲一さんと衣装の壮大さを競う「対決」をして盛り上がっていたことなどから、「ラスボス」(ラスト・ボスの略。最後に出てくる最強のボスの意味)と呼ばれ親しまれてきた。
12年には個人事務所の幹部解任騒動などゴタゴタがあったが、この年の10月にニコニコ生放送(ニコ生)に初登場する。視聴者の悩みにリアルタイムで答えるという企画でさらに人気に火が付き、13年9月にはヒャダインさんが作ったニコニコのテーマ曲「ぼくとわたしとニコニコ動画」を「歌ってみた」動画を公開。ニコニコ史上最速で100万再生を突破(13年10月31日現在)する快挙を成し遂げた。
オタクに受け入れられる理由の1つとして考えられるのは、小林さんの「ノリの良さ」だ。「ラスボス」という呼び名も悪ノリ、悪ふざけのような形で発生したものだが、小林さんはニコ生やイベントなどで「是非ラスボスって呼んでください!」と宣言していて、その度に参加者は「ラスボス!!」と大盛り上がりする。
約50年活動している超ベテラン歌手で、紅白などテレビ番組で大活躍してきたにもかかわらず、テレビと比べたら新興メディアといえるニコニコに「大御所」ぶらずに積極的に参加している点も好感を持たれている。
また、今回のコミケでも参加者が感動したように、にじみ出る人柄の良さも人気につながっていそうだ。イベントで小林さんを生で見たことがあるJ-CASTニュース記者は、「共演者や関係者だけでなく、報道陣など誰にでもニコニコ笑顔を振りまいてくれて隙がない。冗談も上手くサービス精神にあふれていて、多くの人に愛される理由がわかる」と話していた。