中古ブランド品販売のコメ兵が、底堅い成長を続けている。8月8日に発表された2014年4~6月期決算は、消費増税の影響を受けたものの、売上高は前年同期比3.9%減の89億7800万円と底堅く推移した。
ちなみに三越伊勢丹ホールディングスの連結売上高は4~6月期に6・1%減。コメ兵の月次売上高は4、5月は前年を下回ったものの6月が前年同期比13.9%増、7月が23.8増と着実に回復している。2015年3月期の売上高や利益も前期に続いて過去最高を更新すると見られている。
19世紀末に米屋として創業
真夏のある週末、名古屋市のコメ兵本館に行ってみた。名古屋の中心部に「大須」と呼ばれる庶民的な商店街が縦横に広がる一帯があり、コメ兵本館はその一角にそびえる。1階から7階まで中古のブランド品がずらりと並ぶ。
昔の質屋というと、少し薄暗く、後ろめたいイメージもあるが、コメ兵は全く異なる。客の回遊空間が広く、照明も明るい。紳士用腕時計を見ると、新品で30万円くらいのものが10万円程度で売られている。ネクタイはもともと2万円近かったものが5000円余り。新品にこだわりのない人には安い。
目立つのは中国人観光客とおぼしき女性客。欧米系の人も目につく。訪日外国人に人気が高いというのは本当のようだ。
コメ兵の歴史は、1897(明治30)年、現社長の石原司郎氏の祖父が愛知県半田市に米屋を創業し、屋号を「米兵」としたことに始まる。1947年に現社長の父が焼け跡の残る名古屋の大須に進出し、菓子屋の一角を間借りし、古着屋「米兵」の営業を開始。1987年に社名を現在の「コメ兵」に改めた。「お値打ち品」を求める名古屋人に受け入れられ、成長を続けてきた。
グリーと提携、買い取りサービス
ここで、2014年3月期の連結業績を点検しておこう。売上高は前期比17.0%増の402億1200万円で、純利益は46.6%増の18億3400万円。いずれも2期連続で2ケタ増の快進撃だ。コメ兵は国内の景気回復もさることながら、「円安などで増えた訪日外国人の需要が好業績を支えている」とコメントしている。
2015年3月期は消費増税前の駆け込み需要の反動減の影響があるため、伸び率は3~4%に鈍化するものの増収増益の業績予想を出している。アナリストの中には「外国人の顧客増で中長期的な成長が期待できる」と評価する声も出ている。
コメ兵が最近数年で強化しているのは、ネットとリアル店舗の連携だ。オンラインストアで気に入った商品があった場合、希望するリアル店舗に「取り寄せ」して実際に目で確かめられるサービスを導入。店に足を運んで接客を受けることで顧客は納得して買い物ができる。店側としては客がネットを見て持った「欲しい気持ち」を冷まさない効果がある。2014年3月期にこうした「ネットリアル連動購入」の売上高は30億円を突破したという。全体の売上高の1割近くにあたる水準だ。
また、オンラインゲーム大手のグリーと提携。グリーが今年5月に始めた中古ブランド買い取りサービスで、商品鑑定を担当している。地道に鍛えてきた鑑定眼が生かされた格好だ。事業展開のスピードが速いネットビジネスだけにこの提携が大化けする可能性もありそうだ。