銀行の投資信託販売手法に問題あり 金融庁が「2、3年で乗り換え」に厳しい目

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   金融庁が銀行などの投資信託の販売手法に厳しい目を向けている。販売手数料を稼ぐため、顧客に短期間で投信を乗り換えさせる「乗り換え販売」が多いためだ。貸出金利の低迷が続く中、銀行は販売手数料を貴重な収益源と位置づけているが、販売手法の抜本的な見直しを迫られている。

   「2~3年の短期間で乗り換え販売が行われる傾向がある」。金融庁が2014年7月に発表した金融検査の年次報告書は、手数料稼ぎを目的とした乗り換え販売を厳しく指弾した。

乗り換えるたびにかかる販売手数料で「損失」に

銀行の投信販売に金融庁が「待った」(画像はみずほ銀行のホームページより)
銀行の投信販売に金融庁が「待った」(画像はみずほ銀行のホームページより)

   報告書の試算によると、投資家が2003~2013年度に2年おきに売れ筋の投信に乗り換えた場合、投じた資産は3%減少。運用益は出ているのに、乗り換えるたびにかかる販売手数料で持って行かれた形だ。この試算からは「銀行は乗り換え販売で顧客に損をさせている」という強い問題意識が読み取れる。

   実際、個人投資家の投信の平均保有期間は2013年度末で2年と、2009年度末に比べて1年程度も短くなっている。この間、銀行の投信販売収益は伸びたが、預かり資産は横ばい状態だった。同じ投資家が何度も投信を乗り換え、銀行が手数料を稼いでいるだけで、投資家の資産は増えていない実情が浮かぶ。

販売額を重視して営業職員を人事評価

   なぜ、乗り換え販売がなくならないのか。金融庁は、銀行が販売額を重視して営業職員の人事評価を行っている点を問題視している。3月には監督指針を改正し、職員の業績上の評価が販売手数料に偏重していないかをチェック項目に加えた。これを受け、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行、三井住友銀行などは、手数料収入に加え、預かり資産残高なども重視する方向で業績評価や営業活動を見直した。

   ただ、個人投資家の側も、相場が上昇すると目先の利益確保のために保有している投信を解約し、新しい投信に乗り換えようとするニーズが強い。金融庁が推進する長期保有のスタイルは根づいていない側面があるのだ。

「投信の販売手数料は重要な収益の柱」

   また、超低金利や国内資金需要の伸び悩みが続く中、銀行の利ざやはなかなか改善せず、本業の融資での大きなもうけは期待できない。「投信の販売手数料は重要な収益の柱」(メガバンク幹部)で、大企業など有力な貸出先が少ない地方銀行もその傾向は強い。銀行としては販売手数料の増加を目指さないわけにもいかず、大手行幹部は「規制対応と収益増の両立に頭を悩ませている」ともらす。

   金融庁は「投信の長期保有で利益を上げる個人投資家が増えれば、投資家のすそ野を広げることにつながり、長期的には銀行の投信ビジネスにとってもプラス」と強調。今後も銀行や証券会社に販売体制の見直しや、短期の乗り換えによる手数料負担増について顧客に分かりやすく説明することを求めていく方針だ。長く続いてきた商慣行が変わり、顧客目線の営業が定着するのか、銀行などの対応が問われる。

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