インターネット証券最大手のSBI証券は、スマートフォン(高機能携帯電話)の無料通信アプリケーション「LINE」を使って株取引ができるサービスをはじめる。
2014年8月19日(予定)に、証券会社で初めてLINEの公式アカウントを開き、LINEで情報を発信。一方、登録した個人投資家は株価を確認したり、買い注文や約定通知を受け取ったりできるようにする。
若者に投資のすそ野広げる「株取引の導入と補助的役割」
SBI証券の「LINE×証券」融合サービスは、LINEの「ビジネスコネクト」という機能を使って、個人投資家と1対1でやり取りしながらサービスを提供する。
投資家はSBI証券に口座を開いたうえでLINE公式アカウントに登録すれば、取引は可能だ。
たとえば、投資家がトヨタ自動車の銘柄コード(7203)を入力すると、
SBI証券が「トヨタ自動車の現在の株価は6000円です」と、株価を教えてくれる。
投資家がその株価を参考に「買い」を決断。銘柄コード「7203」を入力すると、
SBI証券が「何株ですか」と返信がある。
投資家は「100株」と株数を入力する……。
こんな具合にやり取りをすると、株が買えて、約定通知が届く仕組み。
取引手数料は通常の取引と同じ(1回の注文で、スタンダードプランの場合、10万円以内では税込150円。アクティブプランの場合、同103円)。取引の対象は国内の現物株式と上場投資信託(ETF)で、2014年1月にはじまった少額投資非課税制度(NISA)にも対応する。
SBI証券は、9月中に株価情報の提供などのサービスを開始。12月末までに株取引を可能にする予定。LINEの人気アイテムであるスタンプの提供なども検討していく。
国内でLINEを利用している人は、約5200万人とされる。総務省によると、LINEの利用率は20代で80%、30代で65%と若年層ほど高い。
一方、「NISA」の利用者の多くは投資経験のある40~50代の中高年層が中心。そもそもNISAは、「貯蓄から投資」の流れを促進させると同時に、若年層の資産形成に積極的に活用してもらう目的があった。SBI証券は「(LINEは)若年層へのアプローチに最も有効なツール」とみている。
LINEで株取引ができるケースは同社が初めてで、LINEを日常的に使っている若者に投資のすそ野を広げる狙いがある。同社は「最終的には当社のサイトによる取引につなげていきたい。株取引の導入と補助的な役割として考えています」と話している。
株を「売る」には、ひと手間かかる?
とはいえ、インターネットには株式投資をするしないにかかわらず、LINEのセキュリティを懸念する声が多く寄せられている。最近、LINEのアカウントが乗っ取られて電子マネーなどを騙し取る事件が相次いだためだ。
「わざわざLINEで株やる意味がわからん」
「なんで? SBIでも楽天でも証券会社のアプリでええやん。LINEやってる時点でネットにつながってるんやから直接注文するやろ…」
「アカウント乗っ取りが解決した訳でもないのに、怖すぎる」
「セキュリティのこと、あんまし考えて無いとしか思えんわ」
「さすがに、これはようやらんわ」
といったコメントが目立つ。
株取引ともなると動かすお金も小さくない。万一のことを考えると、躊躇してしまうということらしい。
これでは、なかなかLINEのサービスを使ってもらえないのではないか――。SBI証券はセキュリティ対策について、「サービスは新規会員のみですし、LINEの利用とは別の、専用のユーザーネームとパスワードを利用していただきます。さらに個別の取引には『取引パスワード』を入力してもらいます」とし、万全を期すという。
また、「LINE×証券」融合サービスは、買い注文のみに限定したサービスだ。株を売りたいときは、SBI証券のサイトを利用するしかない。
口座への入金もLINEではできないし、複数の銘柄をスマホの画面で見たり、売買を指示したりするのも文字が小さく、ちょっと手間がかかるかもしれない。
SBI証券は、「LINEで『売り注文』ができない、つまり決済できないのですが、そのようにしたのはセキュリティ対策の一環でもあります」と説明する。