大震災きっかけに「日本を見直さなければならない」
―― 投資が伸びた2011年のわずか1年前には、漁船衝突事件がありました。それでも日本は投資額を増やし続けたわけですが、12年の尖閣国有化では日本製品に対する不買運動も起きました。これは中国政府の嫌がらせなのでしょうか。以前と状況は変わったのでしょうか。
瀬口: 確かに2010年には漁船が衝突しましたし、レアアースの輸出規制問題、日本の会社員の身柄が拘束される問題も起き、通関でも嫌がらせをされました。当時の中国からすれば「日本は大した国じゃない。20年間経済は停滞しているし、米国だけ相手にしていればいい」と、やりたい放題でした。翌11年3月の東日本大震災が、その認識を大きく変えることになります。震災で世界中の工場の操業が止まったことで、「日本はバブル崩壊と共にすでに死んだ国かと思っていたが、実は全世界の部品は日本が供給していた」と思い知らされることなったわけです。そこで「日本を見直さなければならない」となった。しかも、11年の各国別の対中投資額を見ると日本がダントツに多いので、「日本はすごい国じゃないか」と認識を改めることになりました。
08年~10年はリーマンショックの影響で欧米諸国は深刻な停滞に陥りましたが、日本は比較的回復が早かった。そこで「日本は大切にしないといけない」と思い始めた矢先に起きたのが尖閣国有化でした。直後の9~11月の3か月間は、日本に対して相当激しい嫌がらせがありました。ところが12月になると、自動車や日本向けの旅行をのぞくと、通関の嫌がらせも特に厳しいものはなかったし、政府による制裁のような行為は見当たりませんでした。