自民党、ビットコイン規制強化を見送り 利用者の自己責任で取引が明確化

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   インターネットの仮想通貨「ビットコイン」について、自民党IT戦略特命委員会が「既存の規制で縛りつけることをできるだけ避けることを前提としたルールを確立することが大切だ」とする中間報告をまとめ、現行法の改正や新法制定による規制を見送る方針を決めた。

   ビットコインをめぐっては、2014年2月にビットコインの取引サイト運営大手「マウントゴックス」が経営破綻し、同社が個人から預かっていたビットコインが消失した問題を受け、自民党が3月から規制のあり方を検討していた。

前払い式の支払い手段である「電子マネー」と区別

   現行法制では金融庁、消費者庁など、いずれもビットコインの所管官庁でないため、消費者保護に向け、自民党の対応が注目されていた。しかし、自民党はビットコイン関連企業が自主的に業界団体を設立し、交換所のガイドラインを策定するとともに、経済産業省、金融庁、消費者庁、警察庁、国税庁などが「相談・助言を適宜実施する」などとする緩やかな改善方針にとどめた。

   自民党はビットコインについて「仮想通貨でもなく、モノでもない『価値記録』として新たに分類する」と定義。価値記録とは「価値をもつ電磁的記録」のことで、前払い式の支払い手段である「電子マネー」と区別した。電子マネーは資金決済法の規制を受けるが、価値記録であるビットコインは規制外となる。これを受け、これまでビットコインの「取引、支払い」と呼ばれた行為は「交換」と定義され、「送金」は「送付」と呼ぶべきだとしている。

日本でビットコインの取引所は続々と新たに誕生

   日本では所管官庁がなかったビットコインを自民党が今後も規制せず、関連業界の「自治」に委ねようとするのには理由がある。アベノミクスで経済成長を優先する自民党は「ビットコインをはじめとする価値記録のやり取りはビジネスにおける新たなイノベーションを起こす大きな要素となる」「日本を中心にネット時代の新たなビジネスを起こすためには、自己責任とチャレンジ精神を前提とした枠組み作りが必要」と考えているからだ。

   案の定というべきか、「マウントゴックス」の破綻以降も、日本でビットコインの取引所は続々と新たに誕生、3月に「BTCボックス」「payびっと」が開設され、8月にはマウント社の買収に名乗りを上げた米国企業と中国企業の合弁会社「ビットオーシャンジャパン」が取引所を始める予定だ。楽天の三木谷浩史社長は2014年7月、福岡市での講演で「楽天も早晩、ビットコインでお金を受け付けるようになると思う」と語っている。

   ビットコインをめぐる世界各国の対応は、ロシアが「ビットコインは違法」(検察総長室)と表明したのをはじめ、中国、ブラジル、タイの中央銀行も違法と判断して取り扱いを既に禁止するなど、新興国や途上国が規制に動いている一方、米英独加など先進国は、概ね規制を設けず、容認もしくは黙認しており、日本もこれに歩調を合わせた。

消費税を取るほか、譲渡益についても課税する

   ただ、自民党は、ビットコインであっても、通貨やモノ・サービスと交換した場合には、消費税を課税するほか、譲渡益についても課税するという方針も打ち出した。米国政府が株や債券と同様に譲渡益に課税する方針を示しているのを見習った形だ。

   なんとも政府・自民党に都合のよい方針だ。ビットコインは24時間、インターネットがあれば上限額もなく、国内外の送付が10分程度ででき、クレジットカードの手数料が5%前後なのに対して1%程度の安価な手数料が魅力だ。このためクレジットカードを持てない新興国の顧客を狙ったサービスなど、新たなビジネスの創出が期待されている。

   しかし、「ビットコインは匿名性が高く、交換が個人間、国内・海外間で転々と行われるため、移動のモニタリングが困難」と、不透明性さを指摘する声がある。自民党はビットコインの規制や課税方針について「現時点の方針であり、価値記録の使用状況や諸外国の対応を踏まえ、必要に応じて見直す」としている。果たして政府・自民党が明確な改善策を示さぬまま、日本の消費者が安心してビットコインを利用できるのだろうか。

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