「また戦争が来る」という思いを強く持っています
―― 琉球では、国有化は「余計なことをしてくれた」と受け止められているわけですね。
松島: 「余計なこと」でもありますし、国有化の意志決定が琉球の人々の生命や財産、安全を念頭に置いて行われたのか、きわめて疑問です。国有化で中国、台湾が反発して緊張が高まることは予想されていたわけで、琉球人の日本政府に対する信頼を、さらに損ねる結果になりました。
これは米軍基地とも密接な関係があります。琉球人は米軍基地がなくなることを望んでいますが、日本政府の「尖閣周辺の緊張が高まる→先島防衛が必要→日米安保の強化→辺野古移設を進める」といった理屈で、尖閣諸島の緊張を理由に米軍基地の存在を正当化する動きを強く懸念しています。ゆくゆくは戦争につながることも恐れています。
なぜ琉球人が戦争におびえるかというと、実際に70年前に、多くの住民が生活している島において、日本で唯一の地上戦を経験しているからです。「軍隊は住民を守らない」という本質を思い知らされています。島で戦争が発生すると、周りは海に囲まれているので逃げ場がありません。戦闘に住民が巻き込まれたり、日本軍に殺されたり、集団死を強要されたりした記憶が今でも継承されています。「また戦争が来る」という思いを強く持っています。こうした琉球人の記憶と、日本の内地(本土)の人との認識には、本当に大きな隔たりがあります。温度差どころではなく、「認識の壁」があります。