「化粧をしなくても眉の形をきれいに保てる」――眉や目元などに針で色素を注入する「アートメーク」が女性の間で広がっている。
施術は医師免許を持つ人しかできないことになっているが、エステ業者による違法なアートメークが横行しており、国民生活センターは注意を呼び掛けている。
2~3回に分けて施術
眉の形だけで顔の印象が大きく変わるので、女性ファッション誌では眉の描き方特集が組まれるほど重要とされている。「困り顔」が流行った時は、眉尻を本来より下げて描くことで、「守ってあげたい」と思わせるようなメークをする女性があらわれた。
だが毎回のメークで眉を理想通りに作り上げるのは手間がかかる。肌に直接色素を入れてしまえば、スッピンでもきれいな眉になる、という発想でアートメークは行われているようだ。カウンセリングを受けてなりたい眉のデザインを決め、2~3回に分けて施術をしていくのが一般的らしい。最終的にメイクで眉を塗らなくても色がついた状態になる。
ツイッターで検索してみると
「眉毛とアイラインにアートメイク入れてみた」
「アートメイク2回目完了! 痛かったー!」
といったつぶやきが複数あった。
メークといっても針先に色素をつけて皮膚に突き刺し注入するため、水で洗っても落とせない。国民生活センターによると、最近は皮膚にごく浅く色を入れ、数年たつと薄くなるようにしてあるものが主流であるが、「皮膚の浅い深いに関係なく皮膚に針で色素を入れるという施術という意味ではアートメークは入れ墨である」としている。
厚生労働省は「針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為」を、医師免許を持たないものが行った場合、医師法第17条に違反になると2001年に各都道府県の衛生主管部長宛てに通知している。
しかし、エステサロンなどで医師免許のない者による施術が多いようで、無資格で医療行為を行ったエステ経営者の逮捕が相次いでいる。
「眉の回りが赤く腫れて痛みがある」
国民生活センターにはアートメークで受けた危害の相談が寄せられており、
「1週間ほど前アートメイクをしているサロンで眉のアートメイクを受けた。業者の説明では多少は腫れるがすぐに治まるとのことであったので安心して受けた。しかし施術中から痛く、今も眉の回りが赤く腫れて痛みがある。恥ずかしくて外出もできない」
といった事例がウェブサイトに載っている。
また、体に色素を入れるので、アレルギーを起こす可能性がある。業者サイト上のアートメーク宣伝ページには、FDA(米国食品医薬品局)が認可した色素を使用し「安全」であることが強調されているが、それは化粧品として認可されているだけだ。入れ墨としてではない。
他にも感染症の危険性があるほか、除去には入れた時の倍以上の時間と費用がかかるといい、同センターでは「どうしてもアートメイクを希望する場合は、医療機関で行うべきである」と消費者にアドバイスしている。