日中ともに「外圧」ならぬ「内圧」が強すぎ
―― 外交は世論に影響されますが、その世論への影響が大きい中国メディアの報道についてどう思いますか。中立に報じようとして批判されるフェニックステレビのようなメディアがある一方で、環球時報のようなメディアはひたすら日本批判を繰り返しています。
リー: 残念ながら、それが中国の実情です。日本の悪口を言うことは、一般国民の好みに合うことになるので、紙面に日本の批判があふれることになります。
―― 「近隣諸国の悪口を書けば視聴率や部数、ページビューが伸びる」という点では、日本も似たようなものです。
リー: しかし、大衆感情に流されていては悪循環が進むことになります。「言論NPO」が13年6月から7月にかけて行った日中世論調査によると、日本人で中国に対する「良くない印象」を持つ人が90.1%、中国人で日本に対する「良くない印象」を持つ人が92.8%と、いずれも9割を超えています。非常に深刻です。報道は非常に重要な役割を果たすはずなのですが、日中ともに「外圧」ならぬ「内圧」が強すぎで客観的な報道は困難さをともなう状況です。この「内圧」の問題を解決しないと両国間の好感度も回復できないし、相互理解も進みません。
―― リーさんは外交専門誌「外交」13年9月号に「中日の共通の敵『内圧』制御する3つの提案」と題して寄稿しています。この3つの解決策について教えてください。
リー: ひとつが、「新・愛国主義の育成」です。つまり、他者に寛容な、大国にふさわしい愛国主義を持てるようにすることです。少なくとも今の状態では、互いを非難してばかりの悪循環になるので、まずは客観的に冷静に相手を見ることから始める必要があります。
―― ツイッターを使うにしても、事実をちゃんと確認してから意見を言う、出典の怪しいツイートは拡散しない、といった基本が重要です。
リー: メディア関係者であれば、なるべく1次資料にあたる、当事者に確認するといった作業が必要です。