政府は女性の活用推進の一環として、女性限定の補助金を創設する方針だ。
性別を限定して補助金を出すことは異例で、ネット上の一部では「逆差別だ」「法の下の平等はどうなっているんだ」といった声が出ている。
全業種について一律に補助金制度創設なら問題
2014年8月5日、男女共同参画推進本部の会合が開かれ、指針が決定した。15年度に女性限定の補助金を創設することに加え、政府が資材などを調達する際に女性の登用に積極的な企業を優遇する、という。政府は2020年までに女性管理職を30%に増やすことを目標するなど、成長戦略のひとつとして女性の活用推進を掲げてきたので、その一環の取り組みとされている。
ただし、性別を限定した補助金は憲法14条の「法の下の平等」に反するのでは、と従来から懸念されていた。今回の政府の指針にネットでは、
「マジでそういうのは逆差別につながるから必要ない」
「女だけ金が貰えるのか。いいな。いっそ憲法なんて破棄しちまえよ」
「これって憲法違反で訴えれば確実に違憲判決出るのでは?」
といった不満の声がたくさん出ている。
では、政府の今回の取り組みが憲法上で問題になるのか。フラクタル法律事務所の田村勇人弁護士は、憲法14条の平等原則違反にいて最高裁判例は「合理的な区別か不合理な差別か」という基準で判断すると説明する。
「何が合理的かについて、法律の規定方法や、影響、規制目的と手段との関連性」などがあり、仮に全業種について一律に補助金制度が創設されるとしたら、問題があると見る。
「(1)男女間の性差によってどのような職業を選択しても、同じ能力の男女間で雇用機会に差が生じる結果になり、生まれによる区別となりますし、(2)女性の進出が進んでいる業種も遅れている業種をひとまとめに全ての職業について女性を優遇すれば、そもそもの法律の目的である女性の社会進出の促進の観点を超えた影響を及ぼすので、『不合理な差別』となり違憲の疑いがあります」
ただし、「女性の社会進出が著しく遅れている分野」に限るという報道もあり、「今後男女間の平等にも配慮した制度設計がなされれば合理的な区別とされることになるのでしょう」と述べている。
「女性が困っている分野に手助けになるように制度設計するべき」
だが、政府の女性限定補助金制度に対して田村弁護士は、「女性が社会進出する際に最も障害となる問題についてあまり効果はありません」と指摘する。女性は家事・育児を仕事と両立させることに困っているのに、企業に金銭を給付する制度設計では問題の解決にならないという。
「女性が困っている分野に手助けになるように制度設計をするべきで、家事代行サービスへの助成や待機児童の解消のみならず、病理保育や夜間保育も含めた根本的な保育所の問題を改善しなければ、そもそも女性が就職する意欲の改善は見込めず、政府が目指す女性の社会進出に好影響は与えられません」