フェニックステレビが「中国政府寄り」という表現は正確でない
―― フェニックステレビは中国での影響力が大きいだけに、日本メディアに引用されることも多い。「中国政府寄りの~」といった枕詞つきで紹介されることもあります。例えば11年2月19日付の朝日新聞には「鳩山氏『菅政権、ひたすら米追随』 香港のTVで内輪もめ発信」という見出しの上海発の記事が載っています。記事ではリーさんが鳩山由紀夫元首相にインタビューした内容を報じていますが、「中国政府に近い香港の衛星放送フェニックステレビは~」という書き出しで、「鳩山氏が菅政権は東アジア共同体構想を重視していないと批判したことを受け、中国でも警戒論のある日米接近論が報道姿勢に表れた」と論評しています。
リー: これは非常に悪い例です。まるでフェニックステレビが中国政府と共謀してインタビューを企画したかのような記事です。インタビュー放送後、日本メディアの記者が官房長官会見で「長官、今回のフェニックステレビの意図はどこにあると思いますか」といった質問をしたことがありました。私もその場にいましたが、非常に悪意を感じる質問で驚きました。この朝日の記事は、事前に私たちに確認取材をしないまま書かれています。もし取材をしていれば、中国政府の意図とは関係ないことを明確に説明していたはずです。日本という自由に取材、報道ができる国でこういうことが起こるのは残念です。いずれにしても、「中国政府寄り」という表現は正確ではありません。
―― そもそも、鳩山氏へのインタビューは、どのような経緯で実現したのでしょうか。
リー: 2010年に漁船衝突事件があり日中関係が悪化していたので、首相在任時に「東アジア共同体」構想を提唱していた鳩山氏に話を聞こうと考えました。私の発案で、鳩山事務所に直接申し込みました。その後、13年にも鳩山氏にインタビューしました。鳩山氏は「中国側から見れば(日本が尖閣諸島を)盗んだという風に思われても仕方がない」と発言して非常に問題になりました。このときも、日本メディアからは「フェニックステレビは中国政府と結託している」と激しく非難されました。
―― フェニックステレビの立場は、日本で言う民放のようなものですか?
リー: そうです。香港にある上場会社なので、中国の中では唯一自由に報道できるメディアです。それが香港に本拠地を置く理由です。視聴率の面では中国中央テレビ(CCTV)とライバル関係にあるかもしれませんが、報道内容や傾向は全く違います。