「同じ問題を抱える日本やフィリピンと連携」
男性留学生は2014年6月中旬から約1か月間、ベトナムに帰省していた。街中に「反中スローガン」が掲げられている様子は目にしなかったが、以前と比べて変化を感じ取ったという。
「テレビのニュース番組は連日、朝昼晩と中国の動向を報じていました。学者など知識人が解説し、意見を述べていました。中国に対する批判がメディアを通じて流れるというのは、過去にあまり例がなかったと思います」
政府関係者からは最近、中国との関係について「目が覚めた」という発言が聞かれるそうだ。両国とも共産党体制という共通項があり、ベトナム政府は中国政府に対して「固い絆」とまではいかないがある程度のシンパシーは感じていたのだろう。それだけに5月以降の中国の攻勢は、「まさかここまではやらないはず」という一線を踏み越えたととらえたようだ。
現実的には、中国がベトナムにとって陸続きの隣国であり続ける。人口13億人の市場はビジネス上無視できない。今や世界第2位の経済大国となった中国に対して、ベトナムが正面から反抗するのはあまりに無謀だろう。それでも、「戦争はもうこりごり」と誰より平和を求めるベトナム人ですら、中国政府の横暴には腹に据えかねている。
中国側が態度を変えない限り、領土問題解決の糸口を見つけるのは難しいだろう。男性留学生は「同じ問題を抱える日本やフィリピンと連携し、国際社会に訴えて客観的な意見を寄せてもらい、事態を好転させる方向に持っていければ」と望んでいる。