菅義偉官房長官が2014年8月6日発売の「週刊文春」8月14日・21日号のインタビューで、北朝鮮側が「拉致被害者を全員、管理下に置いていると思います」と述べ、9月にも結果の第一弾が発表されるとみられる北朝鮮側の「包括的かつ全面的な調査」に期待感を示した。
仮に北朝鮮が拉致被害者の所在をすでに把握しているとすれば、その前提として拉致被害者の中に生存者がいるということになり、少なくとも拉致被害者に関しては事実上調査が終了しているとも言えるからだ。記者会見では慎重姿勢を守っている菅氏だが、週刊誌のインタビューでは一歩発言を踏み込んだ形だ。
なにをもって「全員帰国」かは明らかではない
菅氏のインタビューは、「池上彰が菅義偉官房長官に迫る!」と題して4ページにわたって掲載された。菅氏は、政府が掲げる「全員帰国」の対象については、
「これまで、日本側で拉致された人の特定をしていますね。この人たちは全員生存しているという前提で動くのが我々の揺るがない基本です」
と述べるにとどめ、政府が公式に認定した拉致被害者12人を指すのか、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない「特定失踪者」や全国の警察で捜査している約860人のことを指すのかは必ずしも明らかではない。
その上で、
「私は、北朝鮮は拉致被害者を全員、管理下に置いていると思います。当局が現在の状況を把握していないということはあり得ない」
と述べた。北朝鮮の調査委員会では、拉致被害者、行方不明者、日本人遺骨問題、 残留日本人・日本人配偶者の4つの分科会が並行して作業を進めることになっている。仮に菅氏の見立てが正しければ、少なくとも拉致被害者については「再調査」するまでもなく、北朝鮮は「調査結果」を把握していることになる。
会見では「北朝鮮側の調査状況を慎重に見極めたい」
ただ、菅氏は記者会見では慎重姿勢を続けており、8月6日午前の会見では、
「北朝鮮と我が国の政府間会合の中で、北朝鮮側は特別調査委員会について、本年夏の終わりから秋の初めの頃に通報を行う、こういうことになっている。現時点においては全くなにも決まっておらず、北朝鮮側の調査状況を慎重に見極めたい」
と述べるにとどめた。調査結果の最初の伝達が9月第2週以降にずれ込む見通しになったという報道についても、
「そうしたことについては承知をしていない」
と否定した。