理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市、CDB)の笹井芳樹副センター長(52)の自殺は、海外にも大きな衝撃を広げた。笹井氏が世界でもトップレベルの研究者だったからだ。
海外メディアは、2014年8月5日、STAP論文の取り下げや、第三者委員会がCDBの解体を勧告したことが笹井氏に大きな衝撃を与えたと指摘。中には、笹井氏の自殺が「日本の伝統に従ったもの」といった独自の分析もあった。
アルジャジーラ「スキャンダルが科学者の命を奪った」
STAP論文を掲載したネイチャー誌は、笹井氏の自殺を「科学にとって本当の悲劇で、研究コミュニティーにとって多大な損失だ」と惜しんだ。
世界各地で笹井氏の自殺が広く伝えられており、多くのメディアがAP通信から配信された記事を掲載した。このAP通信の記事では、
「著名な科学雑誌での論文取り下げはきわめて異例で、この不祥事は日本の科学研究にとって、きわめて後味の悪いものになった」
と解説。カタールのテレビ局、アルジャジーラのウェブサイトでは、このAP記事に「スキャンダルが科学者の命を奪った」という刺激的な見出しをつけた。
米ニューヨーク・タイムズ紙は、
「スキャンダルは、笹井氏のCDBでのライフワークをも脅かしていた。第三者委員会がCDBの解体を提言していたからだ」
とも指摘した。
「スキャンダルに巻き込まれた公人は、償いの手段として自殺を選択」
他紙と方向性が大きく違っていたのがウォール・ストリートジャーナル紙だ。同紙のウェブサイトでは、
「日本では自殺は償いの手段になることもある」
という見出しで、
「笹井氏の研究は幹細胞の21世紀の科学に新たな地平線を切り開くものだったが、笹井氏の一生の終わりは、日本の伝統に従ったものだった。中世から現代に至るまで、スキャンダルに巻き込まれた公人は、償いの手段として自殺を選択することもある」
として、不祥事の末に自殺することは「日本の伝統」だとした。記事では、松岡利勝元農水相や、竹下登元首相の秘書を務めた青木伊平氏など、金銭スキャンダルをもとに自殺に追い込まれた人を列挙している。
ただし、コメント欄には
「この記事はミスリーディング。日本では、自殺はもはや償いの手段でない」
といった異論が続々と寄せられている。