「日中偶発軍事衝突」は起こるのか(5)
中国空軍はなぜ危険行為を仕掛けるのか 自衛隊機に異常接近繰り返す背景
元駐中国防衛駐在官・小原凡司氏に聞く

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中国は強く言われるほど態度硬化させる

―― こういった状況に対して、日本は何ができそうでしょうか。

小原 少なくとも指導部、軍の中枢、多分空軍の司令部は、一連の行為が危険だと理解しています。ですが、空軍の末端までコントロールされていないということも明らかになっている。日本としては、中国に対して危険な行為に抗議することは当然ですが、小野寺五典防衛相が「抗議も必要だが、交流も必要」という態度を示しているのが非常に有効です。声高に非難しても効果がなく、強く言われれば言われるほど態度を硬化させてしまいます。中国は、異常接近は国際的に認められないということを理解しています。一部の自己顕示欲の強い「勘違いパイロット」や一部部隊の雰囲気をどう変えていくかがポイントです。
   罰することはできないが教育はできる。ただ、危険なパイロットを支持する人も多いので、最初から強く指導することは難しく「徐々に」ということになるでしょう。日本なり米国も、中国の中での認識のギャップは認識する必要があるでしょう。それを理解した上で働きかける必要がある。

―― 航空自衛隊が中国軍に国際的なルールについて啓発することは可能なのでしょうか。

小原 「啓発」「教える」は反発するでしょうから、交流の中で自然に身につけてもらう必要があります。日中間に危機管理メカニズムが必要なのは間違いありませんが、現場の制服の人間がやらないと意味がありません。これが今は難しい。そうなると、米中の枠組みの中で、空軍に対しても海軍と同様の国際社会での規範を体得してもらわないといけない。日本は、今のところ米国と連携を密にする以外に、具体的に可能な行為はありません。一方で防衛大臣のように、中国に対する働きかけは続けなければなりません。日本は中国と戦争する気も、挑発する気もない。ただ、中国が「日本がやっていることは挑発だ」と公表すると、中国国内でそう信じられるという事実があります。日本からすれば誤解を解く必要があります。「日本が取っている行動は、国際的には通常行われていること」だという点を理解してもらう必要があります。

小原凡司さん プロフィール
おはら・ぼんじ 東京財団研究員、元駐中国防衛駐在官。1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane'sを経て、13年1月より現職。

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