海外と交流しない空軍は「国際的な常識身につけていない」
―― 見方を変えれば、「空軍は国際的な慣習を理解していない」ということですね。
小原 空軍は本来防空が任務なので、原則として海外に出て行くことはありません。なかなか国外との交流は難しい。先進国では過去の大戦で空軍を使った戦闘を経験しているので、お互いにルールをつくって理解ができている。新たに空軍力を増強してきている中国にはその経験も国際交流もなく、国際的常識も身につけていません。
だからと言って、国際的ルールを口で言ってみたところで、なかなか理解されない。実際に自分で感じてみないと分かりません。そのために中国海軍は時間をかけてきました。空軍は、本来は01年の事案で国際的ルールの重要性を理解すべきでしたが、そうはならなかった。事件直後、江沢民主席(当時)は当初は米国に対して強い態度をとっていなかったのですが、軍の機関紙「解放軍報」がいきなり1面の様子を変えて、行方不明になったパイロットの英雄キャンペーンを始めました。
これは江沢民主席に対してプレッシャーをかけるのが目的で、実際にその後、江沢民は対米強硬路線に転じました。そうして祭り上げてしまうと、この行為は「英雄的行為」だということになってしまいます。01年の行為が「危険で行ってはいけない行為」だと上層部は理解していたはずですが、その認識を若い兵士まで浸透させられなかった。