「日中偶発軍事衝突」は起こるのか(5)
中国空軍はなぜ危険行為を仕掛けるのか 自衛隊機に異常接近繰り返す背景
元駐中国防衛駐在官・小原凡司氏に聞く

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下士官は「日本に対して何かしてやった」と「日本憎し」

―― この状況はいつまで続くのでしょうか。

小原 すでに13年の終わり頃から変化してきているとみられています。ひとつは13年11月の防衛識別圏(ADIZ)の設定です。かなり前から、「このタイミングで公表するんだ。ここで中国軍が目立つ行動をする」という空軍のプレッシャーは常にかかっており、ADIZの設定が公表された結果として、中国空軍は活躍の場を与えられた形です。空軍にとっては、指導部から「東シナ海で暴れまわっていい」と言われ、お墨付きをもらったに等しい感覚でしょう。予算面でも改善されたようです。14年3月の全国人民代表大会(全人代)では、会議の後のぶらさがり取材で、中国空軍の代表がとても元気がよく勇ましい発言をしていたと聞いています。
   今までになかった光景です。日本と同じで、表向き予算は全人代で承認されますが、実際はかなり前に内定していたはずです。空軍はかなりの予算を獲得したはずです。直後の14年4月には習近平主席が空軍関係者と会談して、「中国空軍は空中および宇宙における戦闘力を高めなければならない」という講話をした。これを受けて、中国メディアは「中国の安全と戦略は中国空軍にかかっている」と報道しました。空軍の重要性を公に知らしめたということで、今後はさらに装備面の増強が図られると思います。

―― 指導部は「空軍重視」にかじを切ったわけですね。日中関係にはどう影響しますか。

小原 予算がつき、空軍の中には勢いがあると思います。この勢いが、誤った認識をしている一部パイロットに、蛮勇を振るうような行為をさせている面があります。中央指導部にとってみれば、ようやく空軍に予算をつけて「空軍重視だ」と言った直後に空軍を押さえつけるような指示は強くはできない。
   空軍内部でも、01年の海南島事件と同様に「愛国主義的」だという評判になると、罰するのが難しくなる。軍の中で将校はほんの一部で、大多数は兵隊です。彼らは深く政治のことを考えているわけではありません。国際的な規範を意識している訳ではなく、どちらかと言えば大衆に近い感覚です。こういう人は「日本に対して何かしてやった」と「日本憎し」です。いかに非常識な行為であっても、大衆は喝采をあびせるようなことになる。そうすると、空軍の中でも、そのパイロットをあからさまに罰するのは難しくなります。
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