消費者が混乱する可能性も
こうして固まった新制度だが、消費者、企業の両サイドで期待や不安、不満が交錯している。
新制度は、錠剤やカプセルなどのサプリメントが対象の米国の制度を参考に、対象を広げたもの。経済政策としての位置づけが先行しており、4月に東京で開かれた国際栄養食品協会と在日米国商工会議所主催のシンポジウムで、政府の産業競争力会議議員の竹中平蔵・慶応大教授は「成長戦略の肝は規制改革で、機能性表示も極めて重要な部分だ」と力説、専門家の中からは「農産物の機能性表示は世界初なので、科学的な裏付けのある機能性食材を輸出するチャンスになる」と期待する声が企業サイドを中心に盛り上がる。
一方、消費者側は、消費者庁が飲み合わせ、食べ合わせのトラブルを防ぐため、事業者自らが医薬品との相互作用まで調べ、保健機能成分の定量化を行うなど厳しい条件を課した点は評価するものの、米国で企業に順守を義務付けている適正製造規範(GMP=原材料の製造から出荷まで一定の品質と安全を維持する管理システム)の導入見送りなどに不満が出ている。
また、表示の要件や方法で、最終製品をヒトに与えて有効性と安全性を確かめるか、信頼性の高い研究成果を検証して有効性を確かめるか、いずれかを求めるなど、科学的根拠の裏付けのある内容だけを表示させる仕組みになったため、企業側に「トクホと同じような制度になり、ハードルが高すぎて活用できない可能性がある」との不満を残した。
このほか、農業関係者から「生鮮食品では有効成分といっても産地や品種、生産者ごとに他含有量のばらつきが大きくなるのは避けられず、かえって制度の信用性が傷つきかねない」との懸念も出る。
そもそも、既存のトクホなどと3本立ての制度になって消費者が混乱する可能性が指摘されるうえ、さも健康によいかのような表現で宣伝する食品も巷にあふれている状況は新制度導入でも簡単には変わらない。消費者庁が、市場監視の実効性をいかに確保できるかが問われることになる。