「日中偶発軍事衝突」は起こるのか(3)
戦闘機同士の接触やレーダーロックオン それが軍事衝突の発端になる可能性十分ある
評論家、潮匡人さんに聞く

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「自衛隊が中国より強い」という通説は見直す必要ある

―― 両国の戦力を比べると、どちらが優れているのでしょうか。

: 質的には、日本の自衛隊機の方がはるかに高いです。訓練の練度も士気も高い。ただ、数の面では不安が残ります。日本の主力戦闘機は第4世代機と飛ばれるF-15が中心ですが、中国は日本の3倍以上の数の第4世代機を保有しています。これに加えて、中国はステルス性能を備えた「第5世代機」も開発していると主張しています。これが事実だとすれば、自衛隊は数の上では負けていて太刀打ちできません。そう考えると、これまでのような「自衛隊が強い」という通説は、そろそろ見直す必要がある。馬鹿にしていたら、大変なことになります。

―― そういった環境で、いざ日中が実際に衝突したら「どっちが勝つ」のでしょう。

: そこが悩ましいところです。その時の日本政府、内閣が撃墜を「武力行使」と認定するかが最大のキーポイントです。認定した場合は防衛出動ができるので、いつでも戦争ができる状態になります。中国側は「誤って撃墜した」といった説明をして事態の鎮静化を試みたりはしないでしょう。「詫びず、認めず、謝らず」なので、それなりの戦力をあてざるをえず、最悪、本当に日中戦争、あるいはその手前の状態が長期にわたって展開されるでしょう。予備自衛官や即応予備自衛官らも召集されるでしょうし、すべての戦闘機がすぐに出動できる体制をとることになります。仮に防衛出動が発令されると、「急迫不正の侵害に対して、他に手段がない」場合の自衛権の発動要件のもと、できることを最大限やります。防衛出動が発令されていなくても、領空侵犯には武器が使用できるので、それを根拠に領空侵犯をさせない、撃墜をためらわない姿勢をとるでしょう。

―― 全面衝突のリスクはありますか。

: 「全面的衝突」が核の使用を念頭に置いているとすれば、そのハードルはかなり高いでしょう。自動的に米軍が参戦するシナリオになるからです。それはさすがに中国も思いとどまるでしょう。
   しかし、01年の海南島のケースでは最終的には米側が折れる形で決着しています。長期にわたって米軍機を拘束するということを平気で行った国ですから、それなりの姿勢で臨んでくるでしょう。そうなると、少なくとも全面対決の1歩前のようなことは起こりうる。航空機は上空では停止できず、一触即発の自体が起こる可能性が高いという特性を踏まえる必要があります。ですが、経験の浅い中国空軍がどのような配慮ができるかは疑わしい。
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