日本側の識別装置を回収されてしまうと、日米同盟には致命的な打撃
―― 今回の接近事案では、自衛隊側は偵察機だったのに対して、中国側は戦闘機でした。速度をはじめとした能力にも大きな差があります。
潮: 日本が自転車だとすれば、中国はフェラーリのようなもの。どの国の戦闘機でも、パイロットの座席の背中の部分には脱出装置が装備されています。非常時にその装置を作動させれば、椅子ごと機外に射出されて安全な高度でパラシュートが開くようになっています。接触時にそれが機能すれば、少なくとも中国側のパイロットが即死する可能性は低いでしょう。ですが、事故が起きた時期が冬だったりすると、捜索救難は一刻を争うことになります。他方、自衛隊機は戦闘機ではないので、そもそも脱出装置がない。より生命を失うリスクは高くなります。
―― パイロットはもちろん、墜落した飛行機の捜索作業も関心事です。
潮: 戦闘機自体が機密の塊です。ミサイルを撃つときは目視できない状態で行うので、敵味方の識別は機械やコンピューターがします。この識別装置を回収することが最重要課題です。例えば中国側に日本側の識別装置を回収されてしまうと、日米同盟には致命的な打撃になります。哨戒機や偵察機でも、ばれては困るものは沢山あります。そうなると、機体の回収が文字通り「水面下」の闘いになるわけです。政府は国民に対しては「パイロットを探しています」と説明するでしょうが、実際は少し違います。海南島の事件では、機密が詰まった機体を丸ごと差し押さえられたようなもので、米国にとっては大きな問題を残すことになりました。