「第1列島線」固めて潜水艦で太平洋進出狙う
―― 南シナ海を固めることと、尖閣諸島へのこだわりは、どのような関係があるのでしょうか。
川村: 中国にとって日本列島・沖縄・台湾・フィリピン・ボルネオを結ぶ「第1列島線」は、自国の政経中枢に対する防衛線であると同時に進攻してくる米軍を阻止するための外洋進出経路を確保するための重要なラインです。現在、中国は、「海警」などの公船を展開して「自分が管轄している」という既成事実を作ろうとしています。その狙いは、尖閣を奪うことでまず西太平洋への進出路を確保し、対米抑止力を高めると共に、台湾の武力統一を容易にすることにあると考えられます。その意味で、尖閣は中国にとって絶好の足がかりと言えます。
中国にとって尖閣は軍事的な目的が第一であって、資源獲得は二次的な問題です。資源の問題なら交渉で利益の折半や共同開発で解決可能ですが、軍事的な問題では妥協や交渉はできない。そこを見誤ると「話し合いで何とかできる」といった議論になってしまう。中国の共産党の独裁が続く限り、これまでのやり方は変わりません。中国に「覇権国になる」という目標を変えてもらわないと状況は変わりませんが、その可能性は皆無に近い。話し合いだけではなく力による「抑止」も必要です。こちらが十分に備えた上で「これ以上無茶をしたら力で阻止する」という決意を示す必要があります。
川村純彦さん プロフィール
かわむら・すみひこ NPO法人同崎研究所副理事長、日本戦略研究フォーラム理事。海軍戦略、中国海軍分析のエキスパート。1936年、鹿児島生まれ。1960年防衛大学校卒(第4期)、海上自衛隊入隊。対潜哨戒機パイロット、在米日本大使館駐在武官、第5、4航空群司令、昔の陸・海軍大学校を統合した学校に相当する統幕学校副校長として高級幹部教育に従事する。著書に「尖閣を獲りに来る中国海軍の実力 自衛隊はいかに立ち向かうか(小学館101新書)」など。