中国は、対潜哨戒機はほとんど持っていない
潜没中の潜水艦を探し出して押さえ込むのに最も効果的な兵器は大型の対潜哨戒機です。1機当たりの捜索面積が他と比べて極めて大きいので、少ない機数でも広い海域を押さえ込める。中国は、こういった種類の飛行機はほとんど持っていません。日本の潜水艦からすれば「恐いものなし」なのですが、逆に中国側は外へ出てこられません。
航空優勢を獲得すれば完璧に反撃できます。中国からすれば補給ができなくなるため占領は長続きしない。そこまで考えると、中国も馬鹿なことはできないはずです。ただし、習近平政権の統治基盤は万全ではなく、中国軍内部も完全には掌握されていないようですし、現場の「跳ねっ返り」が何をしでかすか分からない。ネット上では、過激な挑発行為が支持されているのも気になります。
―― 確認ですが、一度上陸されても、奪還できるものでしょうか。
川村: できます。空自が空爆をする。海自も周囲から砲撃もできる。陸上自衛隊の特殊作戦群(特殊部隊)も訓練を重ねており、奪還能力は十分にあるとみています。日本の守りはどんどん良くなっています。13年に決定された防衛大綱の中には「統合機動防衛力」がうたわれており、戦力を北方から西方にシフトさせる方針が明記されています。安倍内閣の登場により、尖閣を含む南西諸島の防御能力は格段に向上しつつあります。
川村純彦さん プロフィール
かわむら・すみひこ NPO法人同崎研究所副理事長、日本戦略研究フォーラム理事。海軍戦略、中国海軍分析のエキスパート。1936年、鹿児島生まれ。1960年防衛大学校卒(第4期)、海上自衛隊入隊。対潜哨戒機パイロット、在米日本大使館駐在武官、第5、4航空群司令、昔の陸・海軍大学校を統合した学校に相当する統幕学校副校長として高級幹部教育に従事する。著書に「尖閣を獲りに来る中国海軍の実力 自衛隊はいかに立ち向かうか(小学館101新書)」など。