致死率が最大で90%にもなるエボラ出血熱が、西アフリカ地域で感染が拡大し続け、死者が672人にも達した。感染者が航空機で移動したケースも発覚し、日本にもウイルスが上陸する恐れが指摘されている。
「今回のエボラ出血熱は、流行の範囲が広いのが特徴です。感染者の移動を止められておらず、事態が収束に向かっている状況ではありません」
過去最悪の規模と報じられている感染について、現地に日本人看護師を派遣している「国境なき医師団日本」の広報担当者は、こう明かす。
感染が航空機を通じて広がるケースが発覚
エボラ感染は、2014年2月にギニアで始まった後、隣国のリベリア、シエラレオネに広がった。国際保健機関(WHO)の集計によると、これまでに3か国で1200人ほどの感染が確認されている。
医療関係者の感染も相次いでおり、防護服でも防げずに100人以上が感染し、うち半数が死亡したとの報道もある。リベリアでは、医療支援のアメリカ人医師(33)ら2人が発症し、隔離されて治療を受けているという。また、シエラレオネで100人以上を治療し国民的英雄とされたシェイク・ウマル・カーン医師(39)も感染し、7月29日に死亡した。
事態の悪化を受けて、アメリカの政府組織「平和部隊」が30日、3か国で活動しているボランティア計340人を一時国外退避させると発表するまでになった。
さらに、エボラ感染が航空機を通じて広がるケースも発覚し、関係者に衝撃を与えている。報道によると、リベリアから航空機でナイジェリアに入ったアメリカ人男性(40)に感染が分かり、数日後の25日に病院で死亡したのだ。エボラは、感染力が強いため、航空機に乗り合わせた人らへの感染がなかったか心配の声も漏れている。
潜伏期間などから、なかなか感染に気づかない
「エボラウイルスは、山火事のように広がる」。アメリカ人にも発症例が見られるようになり、米疾病対策センターでは2014年7月28日、こんな警告を発した。初期症状が発熱やノドの痛みなどエボラ出血熱と分かりにくく、潜伏期間も2~21日と幅があることから、水際阻止もなかなか難しくなっているのだ。
アジア諸国などでも、もちろん例外ではない。
中国の香港では、ケニアに17日間滞在した女性が28日に帰国してから、エボラ初期のような症状を示し、感染が疑われた。その後の中国メディアなどの報道によると、隔離後の検査で陰性であることが判明したという。
前出の「国境なき医師団日本」担当者は、こう指摘する。
「エボラウイルスが今後日本に入ってくる可能性は、ゼロではありません。潜伏期間などのことがありますので、それに気づかないと感染が広がる恐れもあります。ギニアは感染数が減ってきているとの情報が入っていますが、ほかの2国はまだ感染が増え続けていますので、もっとその動向に関心を持ってほしいと思っています」
厚労省の結核感染症課でも、エボラが日本に上陸して感染が広がる可能性があることを認め、「そのときは、感染症法に基づいて、入院や消毒といった対処をすることになっています」と説明している。