1909年に伊藤博文を暗殺し、翌年処刑された安重根の映画化が中国と韓国の合作として進んでいる。歴史認識を巡って日本と対立する中韓両国が、政治だけでなく文化の面でも共闘する図式だ。
映画制作には、中国の習近平指導部の大物が全面支援を約束。世界的な映画監督や有名俳優にオファーするなど「国家プロジェクト」の様相を呈している。
中国映画に出演経験あるクォン・サンウが安重根役
「安重根映画」については中韓の主要メディアが報じている。中国紙「環球時報」電子版は2014年7月29日、監督に中国の張芸謀(チャン・イーモウ)氏が、また安重根の役を韓国の俳優クォン・サンウさんがそれぞれ務めることになりそうだと報じた。タイトルは「撃斃 撃斃」になるという。
張氏は中国を代表する映画監督で、「紅いコーリャン」「紅夢」「HERO」など日本でも知られている作品が多い。数々の権威ある映画賞を受賞し、2008年の北京五輪開会式では総合演出を任された大物だ。また、クォンさんはいわゆる「韓流スター」のひとりで、人気映画やドラマに数多く出演。何度も来日しており、日本でテレビCMに登場したこともある。こうした「日本でおなじみ」のふたりが、映画の主軸となるようだ。
韓国の主要紙「東亜日報」電子版も7月30日、このニュースを報じた。クォンさんの事務所は、「先週、正式に出演依頼が届いた。現在、シナリオの検討を終えた段階。意義ある作品なので前向きに考えたい」とコメントしている。クォンさんはこれまでに中国、香港映画の出演経験がある。2012年の「7日間の恋人」に続いて2013年には「ライジング・ドラゴン」でジャッキー・チェンさんと共演し、中国語のせりふにも挑戦したという。
ただ今回の映画は、エンターテインメントというよりは政治的なにおいが強い。中韓どちらが映画化を持ち出したかははっきりしないが、今年3月には相当具体的な話が進んでいたようだ。複数のメディアによると、脚本は安重根研究の第一人者である韓国の大学教授が務め、またこの時点で張監督へのオファーが固まっていたとみられる。
中国政府も全面バックアップ。習近平政権の最高指導部で序列5位の劉雲山氏は、中韓両国が共同で映画制作を進められるように積極的に支援するとの立場を明らかにしたという。