長崎県佐世保市の殺人事件は、加害者の女子高生(16)が同級生を解剖したと報じられるなど、残虐な側面が浮き彫りになっている。専門家からは、1997年にあった神戸連続児童殺傷事件との共通性を指摘する声が出ている。
「ネコを解剖したことがあり、人間でもやってみたかった」。加害生徒は、長崎県警の調べにこう供述したといい、同級生は実際に、首や左手首ばかりでなく、胸から腹にかけても大きく切り開かれていたという。
人に苦痛を与えることに性的な興奮を覚える?
生徒は「恨みはなかった」とも供述し、同級生との具体的なトラブルも確認されていない。自宅マンションのベッドの上でこうした行為をしていたとみられ、証拠隠滅を図っただけとは言いがたいようだ。
その異常な行動には、予兆のようなことも度々起こっていたと報じられている。
小学6年生だった2010年12月には、同級生2人に「バカにされた」として給食に洗剤を混入させる騒ぎを5回も起こしていた。中学生時代には、小動物を解剖していたとされている。さらに、母親が13年10月に膵臓ガンで亡くなった後、再婚しようとした父親の寝込みを襲って金属バットで殴り、頭の骨や歯を折るなどの重傷を負わせていたという話もある。生徒は、その後の14年4月から、マンションで高校生としては異例の一人暮らしを始めている。
こうした行動については、神戸連続児童殺傷事件で「酒鬼薔薇聖斗」を名乗り当時14歳の男子中学生だった犯人と似ているとの指摘が多い。
当時の報道によると、中学生は、裁判で精神鑑定にかけられ、2つの精神障害の合併症だとされた。
それは、人や動物に対して攻撃的な特徴のある重症の「行為障害」と、人に苦痛を与えることに性的な興奮を覚える「性的サディズム」だ。行為障害とは、大人なら人格障害に当たり、人格が完成していない子供に使われる。
ネコ殺しなど異常行為の積み重ねが原因?
精神科医の町沢静夫さんは、今回の加害女子高生も、2つの精神障害を発症していたのではないかとみる。
「ネコを解剖したり、給食に洗剤を入れたりしたのは、行為障害に当たると思います。それを積み重ねることによって、殺すことに快感を覚える性的サディズムになったのではないでしょうか。女性には珍しいですが、酒鬼薔薇のケースと同じように、同性に対してもありうるはずですよ」
ただ、酒鬼薔薇事件では、精神病は認められず、責任能力はあったとされており、今回の加害生徒も同様ではないかとしている。
報道によると、生徒は、ハンマーなどの凶器を事前に購入しており、殺すことに計画性があった。「マンションで一緒にテレビを見るなどしていたら、我慢できなくなった」と供述しているともいい、最後まで同級生を殺すことへの葛藤がありながらも衝動を抑えられなかったようだ。
町沢さんは、生徒が母親を慕っており、「母親が亡くなって起こったことのショックが大きかったのではないか」と見る。酒鬼薔薇事件でも、祖母だけが頼りだった中学生がその死をきっかけに精神障害を悪化させたとされており、今回の生徒もその可能性があるとみている。
加害の対象が同級生に向いたのは、「親の愛に恵まれていた同級生に無意識のうちに嫉妬するなどしていたこともあったのでは」とも話している。