「通信費用が安くなる」と、ユーザーの期待が高まっているスマートフォンなどの「SIMロック」の解除。いわゆる「SIMフリー」のスマホは、すでに流通大手のイオンやビッグローブなどが「格安スマホ」の看板で売り出している。
注目度が高まる中で、レンタルビデオや書店チェーンの「TSUTAYA」を運営するカルチャー・コンビニエンス・クラブ(CCC)も参入した。ところが、どうも様子がおかしいのだ。
イオンの「格安スマホ」、SIMと端末のセットでヒット
総務省が検討している「SIMロック」の解除の義務化は、2015年の導入が議論されている。一般に、海外に比べて日本の通信コストは高いとされる。ユーザーにしてみれば、その費用が安くなれば、恩恵は大きい。
総務省では、ユーザーの端末がソフトバンクやau(KDDI)、NTTドコモの、特定のキャリアから「自由」になれば、料金も含めたサービス競争がもっと促されるはずと考えている。
2014年4月、流通大手のイオンが「月額2980円」を打ち出し、「格安スマホ」として販売を開始した。「イオンのスマートフォン」は、仮想移動体通信事業者(MVNO)の一つ、日本通信の「スマホ電話SIM フリーData」とLGエレクトロニクスのSIMフリー端末「NEXUS 4」をセットにして発売し、ヒットしている。
それぞれの商品は従来品で、端末も旧モデル。また、通信速度も追加料金を支払わなければ低速だが、それでも端末代金込みで月額2980円という、大手キャリアの半額以下という安さがユーザーの心をつかんだ。
その後も、ビッグローブが参入。同社は、音声通話に対応したSIMとLTEに対応したシャープのスマホ「SH90B」とのセットによる「BIGLOBEスマホ」を、直販を主体として7月から販売。また、日本通信は、Androidスマホの「LG G2 mini」(LGエレクトロニクス製)を、同社が提供する通信サービス「スマホ電話SIMフリーData」と組み合わせ、Amazon.co.jpで販売すると7月24日に発表した。
発売日は8月1日で、価格は、端末代金と通信料金をあわせて月額2980円(税別)からという。
通信コストの「格安」をうたって続々と参入しており、総務省の思惑どおり、「SIMロックの解除」の義務化がはじまれば、大手キャリアもうかうかしていられなくなりそうだ。
「TSUTAYA」の「SIMフリー」コーナー、一人の利用者もなく、1日で撤収
こうした流れに乗ろうと、レンタルビデオや書店チェーンの「TSUTAYA」を運営するカルチャー・コンビニエンス・クラブ(CCC)も2014年7月8日、東京・神谷町の「TSUTAYA BOOK STORE 神谷町駅前店」で、「SIMフリー」のスマートフォンを販売する取り組みを実験的に開始した。
CCCとしては、これまでレンタルビデオ代などに費やされていたユーザーの「小遣い」が、月々にかかる高い通信コストに食われていると考えている。そんな通信コストを下げることで、手元の資金を再びビデオや書籍代に振り向けてもらおうというわけだ。
神谷町駅前店に設けた特設コーナーで、OCNのSIMカードとセットで提案。端末は比較的性能の高いモデルから2万円を切る価格帯までを用意し、いずれも一括で購入してもらうスタイルで発売した。
ところが、その「トライアル」はわずか1日で撤収してしまった。用意した「START! SIM Free」の大きなサインボードも、すでに撤去している。
CCCはその理由について、「運営スキーム上の課題がみつかったため、撤収しました」としている。課題が見つかったのが開始して間もなくだったため、利用者は一人もいないという。
課題の具体的な内容については、「運営にかかわることなので差し控えたい」と話しているほか、今後の「SIMフリー」スマホの取り扱いも「未定」だそうだ。
じつは、「SIMフリー」のスマホは「思うように伸ばせていない」との指摘がある。なぜか――。たとえば、実質ゼロ円のスマホは、使い続ければ通信料金の値引きで相殺されるという計算だが、別のサービスに乗り換えようとした場合には、その「残債」が発生してしまう。
「SIMフリー」スマホは新規に購入する場合、端末代と通信コストが別々に発生するので、初期投資がかかることがある。また大手キャリアを利用している場合、「家族割引」などに加入してトータルの料金を安くしているので、契約変更に手間がかかることもあるとされる。