開業がずれ込む可能性も
トンネル工事では地下水脈が切断され、周辺の河川流量が減ることへの懸念も出ている。環境相は「生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い」と指摘。JR東海がアセスで用いた流量解析モデルの精度を疑問視し、中でも工事で平均毎秒2トンの流量減少(何も措置をせずに掘削を行った場合)が予想されている大井川(静岡県)を含む南アルプス地域で、掘削工事の前に、違う方法で流量予想を解析し直すよう求めた。
このほか、開業に伴い最大27万キロワットの電力の使用が予想されることについても、環境相が「地球温暖化対策に取り組む中、エネルギー需要増加は看過できない」として、再生可能エネルギーや省エネ導入目標を定めるよう要求。クマタカやオオタカなど猛禽類の営巣域と工事区域が重なる場所が複数あることから、工事では営巣期(2~7月)の工事の回避も求めていた。
国交相の意見は、1か月前の環境相の意見を踏まえたもので、いずれも環境相の見解を基本的に踏襲。残土に関しては「仮置き場を活用し、工事車両による円滑な残土搬出を講じる」よう要請。地下水脈では「河川流量の減少は河川水の利用に重大な影響を及ぼす恐れがある」と指摘し、精度の高い予測を行って影響の回避を図るよう求めた。
沿線自治体は基本的にリニア自体には賛成で、住民団体などの反対の声はかき消されがちだ。ただ、具体的に残土問題などで地元との話し合いが始まれば、簡単にまとまるかは別問題。大型ダンプが何年も行き交うことになる残土排出口付近の住民にとって不安は根強く、場所によっては協議に何年もかかる恐れがある。地下水も、今後の解析で仮に予測が大きく変われば、水枯れへの懸念が強い流域で反発が再燃する可能性もあり、今秋着工したとしても、工事が遅れて開業がずれ込むことも考えられる。