論文不正問題が今も尾を引く「STAP細胞」研究の検証番組を、NHKが放送した。その数日前、論文執筆の中心となった理化学研究所・小保方晴子氏にNHK取材班が過剰ともいえる取材を仕掛け、けがを負わせたことが問題となっており、放送前から妙な形で注目を浴びていた。
番組の中で、数人の科学者が集まりSTAP論文を丹念に調べる場面がある。そこで、論文に使用された140点のうち7割に不審な点があるとの指摘が出た。
最終調査報告後にも少なくとも6件の疑義
「不正な論文はなぜ世に出たのか」
2014年7月27日放送のNHKスペシャル「調査報告 STAP細胞 不正の深層」では、この点に迫った。一時は「世紀の発見」ともてはやされながら、理研が「不正があった」と断定し、すったもんだの末に英科学誌「ネイチャー」から取り下げとなった不名誉な論文。番組では、「STAP細胞」は本当に存在していたのか、実験過程に問題はなかったのかも含めて検証した。
理研が4月1日発表の最終調査報告で、論文中の画像・グラフで最終的にねつ造や改ざんを認定したのは2項目。遺伝子解析の画像の切り張りと、STAP細胞の万能性を示す画像が小保方氏の別の論文で使われた画像と酷似していた点だ。これより前、3月14日の中間報告の時点では、画像や論文記述の盗用の疑いが6項目挙げられていたので、「シロ」と判定されたものもあったわけだ。
しかし番組に登場した専門家たちは、不正は2点どころか、論文に掲載された画像など140点のうち7割は信頼性に乏しいか、加工の疑いがあるとみなした。具体的にひとつひとつを挙げてどこが怪しいのかは触れなかったが、検証した専門家は「うっかりミスではない」「あり得ない」と口々に漏らし、意図的であるとの疑いをにおわせた。
理研が最終調査報告を出した以後も、論文に使われた画像についてたびたび疑惑が報じられた。6月4日付の毎日新聞朝刊によると、理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)の自己点検調査で、少なくとも6件の画像やグラフに関する疑義が生じた。
そのひとつが2匹のマウスの写真。それぞれSTAP細胞と胚性幹細胞(ES細胞)を使って作製したマウスとして、両者を比較するために掲載されたようだが、実際は同じマウスの写真を「別物」として使っていたのだ。理研は5月21日にこの誤りを認めたが、詳細を解明するさらなる調査の実施は見送った。