機関投資家向けの変更
東証が刻みの変更に動いたのは、欧米の機関投資家などから「刻みが粗く、売買しにくい」との声が出ていたため。東証は今年1月、3000円超~1万円以下の銘柄について、刻みを従来の5~10円から1円に変更。今回はこれに続く第2弾となる。
欧米では小数点以下まで取引できるようにしている取引所が多く、変動幅が最低0.01%程度というところもある。背景にあるのは、「HFT(ハイ・フリークエンシー・トレーディング)」と呼ばれるコンピューターを駆使した超高速取引。高度なプログラムによって、1秒間に数千回の注文を出し、細かく利ざやを稼ぐ手法で、機関投資家に広く普及している。
この取引で重要なのは値動きが活発なこと。刻みが小さくても、投資額が大きいため、どちらかに動けば利益を上げることができる。逆に、刻みが大きいと値動きが止まってしまうため、利益を生み出しにくいということになる。
だが、個人投資家には利点は少ない。機関投資家のように取引量が多いから、小さな値動きでも儲かるわけで、取引量の少ない個人は変動幅が小さくなった分、大きな利益を得ることが難しくなった。短期売買する個人投資家の場合、注文状況を把握する「板」を見ながら取引を行うことが多いが、刻みが細かくなったせいで、「板」がみにくくなったという。日常生活では「銭単位」を使うことがないため、感覚的に慣れるには時間がかかるとの見方もある。
東証は2015年9月、新たな売買システムの導入する予定で、対象銘柄を拡大するかなどについて検討を進めるというが、プロ、とりわけ機関投資家のテクニカルな取引に一段と偏るようなら、「個人投資家の株式離れを促しかねない」(証券筋)といえそうだ。