再生医療分野で有力医学誌に論文発表していない
その後、バカンティ氏は小保方氏や他の日本人研究者と出会い、「STAP細胞」の研究を加速させていくのだが、麻酔科医であるはずの同氏が、いくら専門家である兄の指導を受けたからとはいえ、大学での基礎的な知識習得の段階を飛ばして再生医療の本格的な研究、画期的な発見が可能なのだろうか。
医療系専門紙の記者に聞くと、バカンティ氏のようなケースは異例だと答えた。「通常、自分の専門領域に特化した研究で名を知られている研究者が大半」というのだ。再生医療分野での成果についても、「有力な医学誌に論文は発表していないようです」と指摘。2001年の研究発表が同僚から不評だったことを挙げ、「この種の論文には研究仲間や資金が必要。後ろ盾が得られず、(有力誌での)発表ができなかったのでしょう」と推測する。「耳マウス」についても、周囲の評判は芳しくなかったようだ。
「麻酔科長」を務めるほどなので、麻酔医としては優秀なのだろう。ただ、なぜ再生医療研究に身を投じることになったのか、どうも判然としない。ボストングローブ紙では「骨の発育に興味を持ったことから兄の研究室に入り、軟骨細胞の育成を始めた」と紹介している。また2003年12月30日付の米ニューヨークタイムズの記事では、バカンティ氏の「骨をつくれるか」との問いにジョセフ氏が「当然だよ」と返答し、以後研究室で軟骨細胞の分離を学び始めたと、ボストングローブ紙と似たような話が書かれており、より詳しいエピソードは出てこない。「興味を持ったから再生医療にくら替えした」では、少々説得力に欠けると言えなくもない。
2001年発表の論文に気になる指摘もある。科学者が発表した論文で「盗作・盗用疑惑」があるものを監視しているブロガー「11jigen」氏のブログには、バカンティ論文の中に使われた画像5点について、人体の部位を解説した市販本に掲載されたものと「同一」であり「盗用の可能性があります」と書かれていた。さらにバカンティ氏らが創刊した専門誌に2011年、小保方氏が論文を発表したのだが、ここにも「画像の重複や誤った配置があった」として訂正している。
STAP細胞論文も画像の誤った使用が原因で不正・改ざんと断定された。「師匠格」のバカンティ教授にも盗用疑惑がぬぐえないとすれば、大きな問題だろう。