小保方氏の指導教授「バカンティ氏」は謎だらけ 本業は麻酔医、「耳マウス」は評判が芳しくなかった

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   STAP細胞の論文不正問題では、筆頭著者だった理化学研究所の小保方晴子氏をはじめ、主だった共著者が次々と謝罪会見を開いた。対照的に、表舞台に顔を出さない「主要人物」がいる。小保方氏の米国での指導教員でハーバード大教授のチャールズ・バカンティ氏だ。

   論文撤回に最後まで反対したバカンティ氏は、実は麻酔科医。再生医療の研究者としては、異色と言えそうだ。

兄に師事、2001年発表の論文は「相手にされず」

   ハーバード大のウェブサイトに掲載されているバカンティ教授の略歴を見ると、所属はブリガム・アンド・ウィメンズ病院の麻酔科長となっている。これだけでは再生医療と縁がなさそうだが、どういうことなのか。

   米ボストングローブ紙電子版が2014年2月2日、バカンティ氏の研究者としての歩みを詳しく報じていた。小保方氏らが「STAP細胞」の研究成果を発表して時の人となった直後の記事だ。麻酔科医であることから「競争が激しく、変化のスピードが速い幹細胞研究の分野で実質的には部外者」と紹介。だがむしろ専門外だからこそ、枠にとらわれずリスクを負える、また多くの研究者が過ちを恐れて研究成果を話したがらないのと比べて、自ら進んでオープンにするタイプだと好意的に評している。

   バカンティ氏の名が知られたのは、「耳マウス」の発表だ。マウスの背中に「人間の耳」がくっついている姿は一見、ギョッとする。これは、軟骨細胞をポリマーの「型」に入れて人工耳をつくり、マウスの皮下に移植したもの。組織工学の研究成果として、バカンティ氏が開発した技術のデモンストレーションをしたのだという。幹細胞の研究者は実験しようと思わない領域にも飛び込んでいく一例として、ボストングローブが挙げた。

   バカンティ氏は4人兄弟の次男。再生医療への道は、兄ジョセフ氏のおかげで開けた。小児外科や移植手術が専門で、ヒト組織工学を研究してきた兄に1980年代後半師事し、軟骨細胞の成長に関する研究をスタートさせた。経歴を見ると、当時はハーバード・メディカルスクールで麻酔科の講師をしている。この取り組みが「耳マウス」の発表につながった。その後、マサチューセッツ大学に移ると今度は弟のマーチン氏を呼び寄せ、脊椎損傷治療のための細胞研究に取り掛かった。研究は難航を極め、同僚の目も冷たかった。2001年、「胞子状の幹細胞」が生体内に存在するとの論文を発表したが、大学ではほとんど相手にされなかったという。それでもバカンティ氏は、発見した「奇妙な細胞」への期待を捨てず、研究を続行した。

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