「納入延期」が3回
MRJは「半世紀ぶりの国産旅客機」とも言われるが、その半世紀前の旅客機とはプロペラの「YS―11」。「ゼロ戦」の設計主任だった故・堀越二郎氏も当初かかわり、1965年に就航したが、海外販売がふるわず、ほどなく生産終了に追い込まれた経緯がある。MRJが同じ轍を踏まない保証はどこにもない。
不安要素の一つは、これまで3回、納入延期を繰り返していることだ。当初は初号機の全日本空輸への納入時期を2013年中としていたが、「海外部品メーカーとの調整に手間取る」などを原因とする3度の延期の結果、現在では2017年4~6月を予定している。航空機メーカーに開発スケジュールの延期は付きものとはいえ、いまだ納入実績のないMRJを世界で売るにあたっては、誤算以外の何者でもない。
とりわけまずいのが、ライバルメーカーの動きだ。小型機メーカーはカナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルの2社に絞られ、そこにMRJが参入する格好。MRJが延期を繰り返しているうちに、エンブラエルは燃費性能の1割向上に成功し、2018年に納入を開始するとされる。MRJの優位性は時間の経過とともに薄れつつある。
今年の航空ショーは昨年8月の3度目の延期発表後の動向を占う意味があり、新規受注を得たこと自体は一歩前進。しかしライバルの性能向上が迫るなか、採算性確保に向けて残された時間は多くない。