不振にあえぐ楽天に手術あがりの星野仙一監督が復帰、2014年7月25日の試合から再び指揮を執った。
前年の日本一だけに、最下位だけは許されない責任を負うことになる。「星野マジック」はあるのか。
「日本シリーズみたいだな」とうれしそうに
星野監督は再登板前日の24日、本拠地仙台での練習にユニホーム姿で現れた。
「日本シリーズみたいだな」
大勢の記者、カメラが待ち受け、うれしそうに星野節で応えた。2か月ぶりのグラウンドに足取りも軽やかだった。
腰痛を訴え、休養したのは5月26日。国指定の難病「胸椎黄色靱帯骨化症」を手術で克服した。「7キロほど痩せた」そうだから、決して楽な闘病ではなかったのだろう。
やはり地元での星野人気は高く、ファンの口からは期待の言葉が出た。
「復帰を機に優勝争いに加わってほしい」
「チャンピオンチームにふさわしい頑張りを見せてくれ」
病み上がりの身に大きな責務がかぶさっている。体とチームの両面で今後も闘っていくことになる。
星野監督はそんな周囲に応じて語った。
「『久しぶりの試合を前に』そりゃ、プレッシャーはあるよ。日本シリーズの前日みたいだな。(指揮については)不安はない」
「寝ている子が起きなければいいのだが…」
大エースの田中がヤンキースに入団して抜けたことが響き、今シーズンの楽天はスタートから勝てなかった。
「ポスト田中」
こう期待されたルーキーの左腕松井はコントロールがお粗末で、チャンスを生かすどころかチームの足を引っ張るありさま。
星野監督の開幕戦から休養までの成績は19勝27敗の5位。
佐藤代理監督は9勝14敗。
大久保代理監督代行は8勝9敗。
そして延べ4人目の復帰監督である。7月23日までの楽天は36勝50敗、勝率4割1分9厘の最下位。首位オリックスとは16ゲームも離された。
すでに自力優勝の可能性は消えている。目指すは3位まで浮上し、クライマックスシリーズ出場。3位の日本ハムまで6.5ゲーム差だから、これはまだチャンスがある。当然、そこに焦点を当てての作戦を、星野監督は病院のベッドで考えていただろう。
他球団が恐れるのは、勝負の世界ではちょっとしたきっかけで流れが変わる、というところだ。星野監督のようなカリスマ性のある人物は、そういう見えない力を発揮することが往々にしてある。
「なんといっても昨年の日本一チーム。潜在的な力は持っている。寝ている子が起きなければいいのだが…」
他球団の監督たちはそう語る。イーグルがエサを求めて飛び立つのを警戒している。「星野マジック」がどうペナントレースを大荒れにするのか、注目したい。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)