30代の男性のうち、18.2%が週60時間以上働いている
では何が一番の問題か。それは、なんといっても、過労死の温床である長時間労働への対処だ。総務省の労働力調査(2012年)では、30代の男性のうち、18.2%が週60時間以上働いているとの結果が出た。1日の時間外は4時間ということになる。厚労省は「過労死ライン」を定めていて、脳や心臓疾患の発症前1カ月間の残業が100時間、発症前2~6カ月間で月当たり80時間超を危険なラインとしている。総務省の調査結果は、この過労死ラインに達しかねない人が全体の2割近いという実態を示している。ここに切り込めるかが、過労死防止のカギを握っている。
これは、「柔軟な働き方」(安倍晋三首相)という労働規制緩和の流れとぶつかる可能性がある。例えば、パソコンやスマートフォンの普及に伴い、時間や場所にかかわりなく仕事ができるようになったことで、フレックスタイムや在宅勤務がひろがるが、これでかえって四六時中、仕事に追われることにもなりかねない。さらに、一定の年収以上の社員限定とはいえ、労働時間ではなく成果で働きを評価するとして残業代を払わない「ホワイトカラーエグゼンプション」の導入も決まった。
現行の労働基準法では、労使が協定を結べば、週40時間労働を越えて、残業時間を延ばせる仕組みになっている。この見直しも視野に、時短に向けた具体策を「大綱」に書きこむことが、過労死防止法の最初の試金石になりそうだ。